*お向かい彼氏*
時計の音だけが広いリビングに響く。
巧が立ち去ってくれることを願ってあたしは俯いていた。
「…わかった。このことは誰にもいわねぇ。」
…良かった。
これでいいんだ…。
「その代わり…俺はお前の傍にいる。」
え…?
再び、今度は後ろから温もりに包まれた。
「…俺がお前を幸せにしてやるから…。」
泣きそうな声なのにどこか力強い。
そんなコトバを言われて、あたしの心の糸が切れる…
子供のように泣くあたしを
巧はずっと、ただ抱きしめてくれた。
久しぶりに感じる人の温もりは
あたしの心の隙間にするすると流れ込む。
もう…頑張らなくていい……?
行き場のないその問いに答えるように
巧はあたしの頭にキスを落とした。