*お向かい彼氏*
ガヤガヤとうるさい街の中、俺達をシンとした空気が包み込む。
目を伏せたまま、ひかるは口を開いた。
「…光輝なんか、大嫌い。」
「……っ」
「なんでそーなの?なんでそんなこと言うの?あたしが…っあたしが今までどんなに悩んだと思う?!でも光輝はそれを…好きだって言葉で片付けちゃうんだ…」
…え
ひかるが言ってる意味がわからない…
でも、涙を流しながら俺を睨みつける姿も堪らなく愛しい。
「バカ、光輝のバカ。なんで…なんでキスなんかしたのよ、あたしだってめちゃくちゃ苦しかった!悲しかった!
もう二度と…あんなことしないで…!!」
…それって…
「もう何年も前のことだから許す!でも次浮気したら何が何でも許さないから!!」
その言葉を聞いた瞬間
我慢出来なくて…目の前の華奢な身体を抱きしめた。
あぁ、ひかるがいる…
俺の腕の中に、最愛の人が確かにいる。
そのことがどうしようもなく嬉しくて瞳から涙が零れた。