*お向かい彼氏*







「あたしの親ね、とうとう離婚したの。」





家族のことを光輝に話すのは初めて。




誰にも言ったことなかった。こんな崩壊した家庭のこと…。





「あたしが小さい頃から両親はもうお互いになんの感情も持ってなくて、2人とも共働きだからあたしはアキ姉とタケ兄に育てられたようなもんだったの。それで光輝と距離を置いた日、ついに離婚の話が出て…。」




あの日は、なんて厄日だったんだろ。




冷え切った我が家。



愛のない視線。





「お母さんも今の家を出るっていうから、あたしはこの機会に全部から逃げ出したくて…東京のタケ兄の家で暮らすことにしたー…」







転校先の中学校は最悪でね?



必死で勉強して、偏差値の高い高校に入って…




入学式の日、巧と再会して。




まさかのご近所。





それから付き合うようになって…









「カラダも…、重ねたよ。」









ここまでスラスラ話せたのに、この言葉を言うのには勇気がいった。





嫌われちゃうかもしれない。



それでも



言わないとダメだと思った。









「巧はたくさんの愛をあたしにくれた、けど…結局あたしは好きになれなくて、高3の秋に別れた。」










< 295 / 331 >

この作品をシェア

pagetop