*お向かい彼氏*






「なっ…え、貴方…!!」




「だから、何してんのって聞いてるの。答えてくれる?」





足音が近づいてきて背中に手が添えられた。



そのまましゃがんで、あたしの肩を抱く。



ザワザワしてるはずのみんなの声も全く気にならない。


あぁ…来てくれた。



裏切られなかった…。





改めて、気づくのは過去のトラウマ。




二度とことはあたしにとってキツかったみたいだね…。





「…はぁ、黙ってないでよ。もうひかる連れて行っていい?」




「ちょ…ちょっと待って!ホントに宮部さんの彼氏なんですか?なんで?八田先輩は⁉︎」




「…八田はただの同僚。なんでキミにそんなこと口出されなきゃいけないわけ?もう何年も前から俺の彼女はひかる1人。」




「…何年も前、とか…」




ボソリも小声で突っ込むと少しだけ肩を抱く腕に力が入った。





…さぁ、光輝に任してられない。




あたしも復活しなきゃね。






暖かい腕を振りほどいて立ち上がる。





一斉に視線が集まるのを感じながらあたしは彼女をまっすぐに見据えた。





すっかり怯えていて情けない牧田さん。


とりまきちゃん達は遠くに離れていってるしね。






「…満足?」



「な…っ!」




「あたしを怒らせた罪は重いわよ。」







笑う。



凍りつくような綺麗な笑みで。


















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