*お向かい彼氏*




駅の改札前。


柱に寄っ掛かりながらすっかり陽が落ちた街を見る。



階段下のその世界は色とりどりの光が輝く中見知らぬ人々がうごめいていた。





「遅いなぁ…光輝さん。」




ケータイは21:30を表示している。




いつも帰る時間…もう3時間以上過ぎてる。




寒い…。


手袋してくれば良かった。



制服のままだからコートとマフラーだけ。



あんまり遅いと補導されちゃうじゃん。






今、また一本電車が行った。





改札から出てくる人の群れにいくら目を凝らしても一所懸命作ったチョコを渡したい相手の姿は無くて。







今日渡すって、言っとけば良かった。







たくさん貰ったチョコは家に置いてきたから、今右手に下げるのは光輝さんに渡す本命チョコだけ。





さすがに3時間はつらいよ…。





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