*お向かい彼氏*
無意識に
紙袋が右手から離れる。
ストンと落ちたその音はまた来た電車にのみ込まれた。
見たくない
見たくない
信じたくない
考えたくない
嫌でも行き着いた、結論。
ーーあたし……
再び改札口は人混みに溢れて呆然と立っている2人が見えなくなった。
駆け寄ってこようと腕を外す光輝さんを横目に
ガトーショコラの紙袋
そのままに
何時間も立っていたその駅を後にした。
勢いよく階段を駆け下り人混みに混じる。
きっと追いかけてこない。
だって