時を越えて~タラシ女子と新撰組~
急ぎの用はねーから。気が落着くまで喋るな。
いまだに、肩を荒々しく上下に揺らす私を見た土方さんの気遣いだろう。
『す、いま……せん』
「いーつってんだろ。ほら、しっかりしねーか」
私の背中を、大きな左手でゆっくりと撫でる。
ゆっくりと動く左手のように、だんだんと呼吸も穏やかでゆっくりなものへ変わっていった。
『土方さんに伝えたいことがあって……。でも、土方さんの部屋分からなくて』
屯所内を全力疾走してきました!!と、ヘラッと頬を緩ませる私の頭に土方さんのチョップが振り下ろされた。
――――ドスッ
『あいたッ!!』
痛みで涙目になる私を、土方さんは呆れ顔で見つめていた。こいつは……。とでも言いたげな彼の表情に、私は苦笑いを浮かべることしかできなかった。