時を越えて~タラシ女子と新撰組~
「立花組長の部下の菊池です。組長の元へご案内します」
さぁ、どうぞ。と手のひらを玄関口へ向ける。片華は安心したようにため息を吐き、頷いた。
玄関口に向かう菊池の後ろを、片華は着いていく。玄関口の横を通り中庭へ向かう。しかし、ピタリと菊池は足を止めた。
「片華太夫。数日前の事件はご存知ですよね」
「……へ、へぇ。皆はんすごい騒いではりましたし。……もしかして、南はん怪我でもしはったんどすか!?!?」
顔を青くして片華は、菊池に飛びついた。
「いいえ、立花組長はお怪我をなさっていませんが。沖田組長が、原因不明ですが、意識をお戻しになっておりません」
「え??」
「……組長は、普段。格好よく、威厳のあるお方です。しかし今は……」
片華から目線をそらし、グッとこらえるように菊池は口を閉ざした。しかしすぐに心を決めたように、視線を戻した。
「その姿は無いかもしれません。あなたが、いつも通りの組長をお望みになるのでしたら、お帰り願います」
菊池は頭を下げた。