プリンセスデビュー
私とアイツと
「んっ」と少し声を漏らして、ぐっと背伸びした。
体育の授業が終わったばかりで、女子の殆どはぐたっとしていた。
「この猛暑の中でのサッカーはキツいよぉ・・・」
アタシの隣にいた、相田紗良(あいださら)が机に突っ伏せながら、苦しそうに声を出した。
紗良はアタシの親友であり、校内1の美少女だと名高い女の子。
でもとってもいい子なんだよ。あと、おしゃれとか大好きだな。確か。
紗良のポニーテールをぐるぐる回して遊びながら、アタシは
「そおかな?アタシは楽しかった!」
と声を張ると、紗良は「千苗はどーしてそう元気かなぁ」と声を漏らした。
アタシ、浅桐千苗(あさぎりちなえ)は元気が取り柄なごくごく普通の女の子・・・のつもりなんだけど、男勝りなところがあって、男子からは女の子扱いされないし、女子からは「千苗かっこい~」なぁんて言われる始末。
しかも、黒髪の超ショートな外見のせいで、より男っぽく見える・・・!
そんなの、もう慣れっこだけどさ・・・。
「あれ?次教室移動だっけ」
なんとなく問うと、紗良は気だるそうにいった。
「あーそういえば家庭科だったっけ。んー確か・・・調理実習?」
「げっ。まじかよぉー」
アタシがそう嘆くと、紗良は横目に時計を見て、はっとしたように机を思いっきり叩いて立ち上がった。
「休み時間あと5分しかないしッ!!よし、千苗!早めに家庭科室いってダラダラしよ!」
といっても、アタシ達の教室は、どのクラスよりも特別教室に近い。
だから開始ギリギリに移動しても全然余裕だけど、紗良が言うなら仕方がない。
音を立てて立ち上がって、教科書を用意しながら、ふと考えた。
調理実習ってことは・・・班は紗良と・・・アタシと・・・大久保君と・・・げっ。
「遥斗じゃんッ!」
「おう、呼んだかー?」
「呼んでない!帰れ!!」
日下部遥斗(くさかべはると)。アタシの幼馴染で、すっごくムカツクやつ。
「帰れって・・・ひでぇな千苗は」
「うるさい。行こ、紗良」
「う、うん」
無理やり紗良の背中を押して、教室の扉まで連れて行った。
そのまま、愚痴愚痴と遥斗のことを言った。
そんなアタシは見て、紗良は苦しそうな、ちょっと曖昧な笑顔で受答えしてくれた。
でも、そんな小さな紗良の異変に、アタシは気付けなかった。
◆
「今日は、カレーを作ろうと思います」
家庭科担当の教師が、黒板に絵と、簡単な作り方の説明を書いて、それを口で説明していく。
そんな様子を欠伸混じりに眺めていると、いつの間にか実習は始まる。
「千苗、悪いけど野菜洗っておいて」
「うん。分かった。そんなことでいいの?」
「うん。いいのいいの!」
紗良は、着々と、手際よく準備を進めていく。
やっぱり、紗良って優しいなぁ。なんて思って、顔が自然に綻ぶ。
すると、不意に遥斗が口を出してきた。
「ばっかだなー千苗は!相田はお前にやらせると皿とか割りそーで不安だから簡単なのをやらせたんだよ!」
「なっ・・・!?遥斗!紗良がそんな事思ってるわけないじゃん!」
「そ、そうだよっ!あたし、そんなコト・・・」
「あぁ、ごめん。相田。そーいうつもりじゃなくて、ただ単に千苗からかいたかっただけだから!」
「~~!遥斗の馬鹿野郎!」
「うるさい男女!」
ぎゃあぎゃあと2人して言い合いをしていたら、先生にぽかっと叩かれた。
そのあいだにも、紗良と、大久保君は準備を進めていたようで、喧嘩が収まる頃にはもう準備が出来ていた。
「ごめんね紗良!大久保君!全部やらせちゃって・・・」
「ううん気にしなくていいのッ!」
紗良は首を横に振ってから、優しく笑んでみせた。
「それじゃ、そろそろ始めましょうか」
と、大久保君が言った。
紹介が遅れたけど、大久保統哉(おおくぼとうや)君は、成績がよくて、顔もそこそこ~な感じな遥斗とは大違いの男子。
体育の授業が終わったばかりで、女子の殆どはぐたっとしていた。
「この猛暑の中でのサッカーはキツいよぉ・・・」
アタシの隣にいた、相田紗良(あいださら)が机に突っ伏せながら、苦しそうに声を出した。
紗良はアタシの親友であり、校内1の美少女だと名高い女の子。
でもとってもいい子なんだよ。あと、おしゃれとか大好きだな。確か。
紗良のポニーテールをぐるぐる回して遊びながら、アタシは
「そおかな?アタシは楽しかった!」
と声を張ると、紗良は「千苗はどーしてそう元気かなぁ」と声を漏らした。
アタシ、浅桐千苗(あさぎりちなえ)は元気が取り柄なごくごく普通の女の子・・・のつもりなんだけど、男勝りなところがあって、男子からは女の子扱いされないし、女子からは「千苗かっこい~」なぁんて言われる始末。
しかも、黒髪の超ショートな外見のせいで、より男っぽく見える・・・!
そんなの、もう慣れっこだけどさ・・・。
「あれ?次教室移動だっけ」
なんとなく問うと、紗良は気だるそうにいった。
「あーそういえば家庭科だったっけ。んー確か・・・調理実習?」
「げっ。まじかよぉー」
アタシがそう嘆くと、紗良は横目に時計を見て、はっとしたように机を思いっきり叩いて立ち上がった。
「休み時間あと5分しかないしッ!!よし、千苗!早めに家庭科室いってダラダラしよ!」
といっても、アタシ達の教室は、どのクラスよりも特別教室に近い。
だから開始ギリギリに移動しても全然余裕だけど、紗良が言うなら仕方がない。
音を立てて立ち上がって、教科書を用意しながら、ふと考えた。
調理実習ってことは・・・班は紗良と・・・アタシと・・・大久保君と・・・げっ。
「遥斗じゃんッ!」
「おう、呼んだかー?」
「呼んでない!帰れ!!」
日下部遥斗(くさかべはると)。アタシの幼馴染で、すっごくムカツクやつ。
「帰れって・・・ひでぇな千苗は」
「うるさい。行こ、紗良」
「う、うん」
無理やり紗良の背中を押して、教室の扉まで連れて行った。
そのまま、愚痴愚痴と遥斗のことを言った。
そんなアタシは見て、紗良は苦しそうな、ちょっと曖昧な笑顔で受答えしてくれた。
でも、そんな小さな紗良の異変に、アタシは気付けなかった。
◆
「今日は、カレーを作ろうと思います」
家庭科担当の教師が、黒板に絵と、簡単な作り方の説明を書いて、それを口で説明していく。
そんな様子を欠伸混じりに眺めていると、いつの間にか実習は始まる。
「千苗、悪いけど野菜洗っておいて」
「うん。分かった。そんなことでいいの?」
「うん。いいのいいの!」
紗良は、着々と、手際よく準備を進めていく。
やっぱり、紗良って優しいなぁ。なんて思って、顔が自然に綻ぶ。
すると、不意に遥斗が口を出してきた。
「ばっかだなー千苗は!相田はお前にやらせると皿とか割りそーで不安だから簡単なのをやらせたんだよ!」
「なっ・・・!?遥斗!紗良がそんな事思ってるわけないじゃん!」
「そ、そうだよっ!あたし、そんなコト・・・」
「あぁ、ごめん。相田。そーいうつもりじゃなくて、ただ単に千苗からかいたかっただけだから!」
「~~!遥斗の馬鹿野郎!」
「うるさい男女!」
ぎゃあぎゃあと2人して言い合いをしていたら、先生にぽかっと叩かれた。
そのあいだにも、紗良と、大久保君は準備を進めていたようで、喧嘩が収まる頃にはもう準備が出来ていた。
「ごめんね紗良!大久保君!全部やらせちゃって・・・」
「ううん気にしなくていいのッ!」
紗良は首を横に振ってから、優しく笑んでみせた。
「それじゃ、そろそろ始めましょうか」
と、大久保君が言った。
紹介が遅れたけど、大久保統哉(おおくぼとうや)君は、成績がよくて、顔もそこそこ~な感じな遥斗とは大違いの男子。