空と月の下
メールをしながら風呂場まで向かった甲斐は、シャツを脱ぎ、その上に携帯を置いていた。
そしてシャワーを浴び、タオルで体を拭いた後に、シャツと共に一緒に掴んで洗濯機に放り込んでいた。


洗濯機はもう回っている。


今慌てたとしても、携帯は洗濯物と一緒に洗われ、機能は完全にダメになっているのは間違いない。


今日一番の大きなため息が漏れる。




「完璧にダメだな…」




停止ボタンを押すことなく、甲斐はダメになった携帯を諦め、バックアップしていた記録媒体を保管場所から取り出すと、玄関へ向かった。




「この雨の中、携帯を買いに行かなきゃならんのか…」




完全にダメになった携帯を修理に出すより、新しいのを買った方が安かったりする場合がある。
仕事でも携帯は必須なため、壊れたままだと甲斐自身厳しいこともあり、行動は早めの方がいい。




「まぁ、洗濯もまだ終わらないだろうから…いっか…そんなに遠いわけでもないし」




甲斐は傘を持ち、玄関を出る。
静かだった部屋の中とは違う、雨の音が直に聞こえる。
あまり人がいないせいか、何となく寂しげな雰囲気が漂っている。


鍵を閉めると、甲斐は携帯ショップへと歩き出した。


甲斐の住んでいるマンションから歩いて約10分。
しとしと降っている雨は、ほんの数分で甲斐の足元を濡らしていた。




「やっと着いた」




傘を閉じ、落ちる滴に気を使いながら、携帯ショップの中へ入った。




「いらっしゃいませ」




髪を一つに束ね、爽やかな笑顔の女性店員が甲斐の元に来た。




「今日はどのような…」




甲斐は一部始終を話し、今ある携帯は後に解約することにし、新しく携帯を買うことに決めた。

店員に促され、案内された椅子に座る。

甲斐は選んだ携帯を店員に告げ、契約書が渡された。
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