空と月の下
沙紀の視線は遠く、コーヒーから出ている湯気を眺めていた。




「ねぇ、甲斐」




沙紀の真剣な表情に、甲斐の視線は止まる。




「何?」

「…ずっと聞きたかったの…」

「うん…?」

「なんで付き合ったの?」

「…え?」

「どうして私と付き合ってくれたの?」




コーヒーに視線を向けたまま、沙紀は甲斐へ質問をした。
握られたコーヒーカップに力が込められる。

甲斐はコーヒーを一口飲むと、雨の滴が流れている窓へ視線を移す。


沈黙が流れる。


ぼんやりと映る外の景色に、甲斐は高校時代に過ごした時間を思い出していた。
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