空と月の下
白い壁に華やかなステンドグラス。
降り注ぐ光が教会内を幻想的な世界に魅せている。


ブラウンの長椅子には拍手や笑顔でいっぱいの招待客。



そして、ついに扉は開かれ、白いドレスに身を包み、父親と腕を組みバージンロードを歩く新婦の姿が現れた。



一歩一歩ゆっくりと歩き、ついに父親から新郎の手へと新婦が渡る。



恥ずかしそうに目を合わせ、前を向く。
一時の沈黙が流れた後、式は順調に進んでいき、無事に終わることができた。


新婦は新郎と共にバージンロードを歩く。
招待客は用意されていた花弁を新郎新婦に掛けていた。




「オメデトウ!」




賛美の言葉が飛び交う。
そして新婦は一人の招待客の前で足を止めた。




「美菜、今日は来てくれて嬉しい。本当にありがとう」




深々と頭を下げる新婦に、隣の新郎も少しだけ頭を下げた。




「何を言ってるの。舞の晴れ姿だよ。来るに決まってるでしょ!」




美菜は舞の肩を軽く叩き、笑顔で頷いた。
舞の瞳は涙で潤み、肩に置かれた手の上に、自分の手を重ねた。




「ほら、まだ涙を流すには早いよ!これから披露宴だってあるんだから。その時のために取っておかなきゃ」




美菜の言葉に、舞は涙をこらえ、震える口元で笑顔を作った。そして、新郎と共にゆっくりと歩き出す。美菜はその後ろ姿を見送った。



社会人になって3年が経った。年齢も20代後半になり、”結婚”の二文字が目立ち始める頃だ。けれども、美菜自身にはまだ遠いことのように思えていた。

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