空と月の下
「何?話したいことって…」

「俺さ、お前と初めて話すようになってから今までずっと楽しかった。なんていうか…ずっと、こう…バカやって笑って話して…ってやるんだと思ってたんだ。だから、進学のことについて話した時にイラっときちまった。同じ道を行くんだと思ってたし…でもさ…」

「……うん…」




美菜は静かに瞳を閉じる。
これから言う甲斐の言葉が何となく想像できた。


できるならここで会話を終わらせたい…。


けれど、そんなことはできない。


甲斐の言葉は続いた。




「違うんだな、と思った時に、一緒にいる意味が突然分からなくなったんだ。いつも一緒にこうやっていることが普通だと思っていたから…」

「え…あ…ちょ、ちょっとま…」

「思えば、それが間違いだったんだよな」




言葉を止めようとした美菜の言葉を遮り、甲斐は言葉を上乗せする。




「俺さ、沙紀と付き合うことになったんだ」




甲斐の言葉を受け、美菜は何かに殴られたような衝撃を受ける。
頭の中で木霊する言葉の意味を美菜は考えていた。




「不思議だよな。付き合ってるわけじゃないのに、ずっと一緒にいるなんてさ…でもさ、楽しかったよ。ホントに」

「え…」

「沙紀と一緒にいることは、美菜とは違う楽しさがある。楽しいと言うよりも、落ち着く、が正解かな…」




いつもと同じ距離で話をしているのに、美菜は甲斐の顔を見ることができない。話している口元でさえ見ることを拒んでしまう。
そのまま俯き、声を失った美菜は相槌を打ち、甲斐の言葉に応えていた。


徐々に下を向く美菜に気付いた甲斐は、不思議そうに美菜の顔を覗き込んだ。




「どうした?」

「……あ…ううん…なんでも、ない…」
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