空と月の下
夏休みになり、甲斐は家の中で暑い中参考書を広げていた。

やらなければならないとは分かってはいるけれど、精神がついていかない。


参考書は広げているが、手にはペンも握られていないうえに、体はベッドに横たわったままだ。


これでは勉強しているふりにしかならない。



分かっていはいる。
けれど、外は最高気温が34度と言われている程の暑さ。


そんな中で本気モードになれるほど甲斐の体は器用でもない。


汗で濡れる額を拭いながら、甲斐はベッドの上で体制を整えていた。




「…暑い、暑すぎる…」




様々な体制になるが、暑さは変わらず、動く分だけ不快感は増す。
甲斐はふいに携帯を手に取った。

開く画面はメールの画面。


沙紀と付き合うようになってから、メールや電話の回数も増えた。
毎日何かしら届くメールに甲斐は沙紀の身近さを感じていた。


付き合う。


それは彼氏彼女の関係。


こんなにも携帯を気にするとは甲斐自身も思っていなかった。
そしてタイミング抜群に沙紀からメールが届く。



”甲斐、ごめん!今日は何か予定ある?自由研究のレポートが終わらないの…お願い!手伝って(涙)”


”仕方ないなぁ。いいよ、特に予定ないし。どうする?図書館にでも行くか?”


”図書館!そっか、図書館という場所があった。うん、OK!ありがとう!じゃ、図書館集合でよろしく!”


”了解”




甲斐は携帯をベッドに放り投げ、だらけた髪型を整えた。汗だくになった部屋着を脱ぎ捨て、Tシャツにジーンズという簡単な服装に着替えると、荷物を鞄に詰めて家を飛び出した。


別に焦る必要はどこにもない。


けれど、楽しみにしている気持ちが大きい。


甲斐は真っ直ぐに図書館へ向かった。
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