空と月の下
「あぁ、本当に綺麗!ったく、ホントに美少女よね、昔から」

「郁、もう少女…じゃ…」

「!!ま、まぁ…そうだけど…顔がいいのは昔からよね」

「そうそう。性格は男前なんだけどね」

「うんうん」

「あ、ところで牧村君元気?」

「牧村君って、私も牧村よ。て、当たり前か。元気よ、本当にかなり」

「はははは。パパになるんだもんね。そりゃ元気にもなるよね、うん。聞くだけ野暮だったか」

「かなり親バカになりそうよ。毎日話しかけてるの」

「いいことじゃない。幸せそうで、嬉しいわ」

「あぁ、ホント。私、美菜のそういうところ好きだわ」

「?」

「人の幸せが嬉しい、ってとこ」

「え?嬉しいよ、うん」

「いいの、いいの。それが美菜の性格なんだから深く考えちゃダメ。そのままでいいの。…美菜だって、武君とどうなのよ?」

「ん?普通だよ」

「普通って、結婚、しないの?」

「結婚…かぁ…会話に出ないなぁ。私もあまり気にしてないかな」

「はぁ、珍しい。普通、この時期の女の子って妙に焦ったりしない?周りが結婚ラッシュになる頃だしさ」

「あぁ、会社の後輩は確かに焦ってる」

「会社の後輩じゃなくて…はぁ、まぁ、何かあったわけじゃないし、幸せそうだからいいか」




ため息交じりに会話を終えた郁は、頬杖をつき、飲み物メニューに目を移した。
そして、会場が暗くなり、披露宴が開始する。
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