空と月の下
甲斐と沙紀は一度お互いの家に帰り、再び夕方の待ち合わせまで花火大会に行く準備時間となった。




「俺は…普通でいいよな。とりあえずは汗だくTシャツは着替えていくけどさ…」




花火大会のことを考えてはいるが、図書館で見た美菜の後ろ姿が気になって仕方がない。なのに、別の部分では沙紀の浴衣姿が楽しみに思う気持ちもある。


沙紀は彼女だ。


美菜は今まで一緒にいた気心知れた仲のいい友達とも言える間柄だ。

だからこそ気になるのかもしれない。


今は沙紀のことだけを考えたとしても、それは当たり前のことだ。



甲斐は自分を納得させると、新しいTシャツに着替え、リビングに移動するとアイスコーヒーを入れて時間までくつろぐことにした。


それから約2時間もの時間を過ごし、甲斐は待ち合わせ場所まで急いだ。


待ち合わせ場所は最寄りの駅改札口。

そこから一緒に会場まで行き、花火大会のイベントを存分に楽しむことになる。




「ごめん、またまた待った?」

「うん、それはもう、かなり待った」

「えぇっ!?そんなに?」

「そりゃもう、沙紀の浴衣姿を見れるのはまだかと心待ちにしてたよ」

「……す、すごいこと言うね…恥ずかしい…」

「え…それは…また、すみません…」

「ふふ。嘘!嬉しい!」




最寄り駅に現れた沙紀の姿は、いつも見ている姿とは違う雰囲気をまとっていた。それがまた甲斐の心をくすぐり、これからの時間を更に楽しみにさせてくれる。

甲斐と沙紀は電車に乗り込み、花火大会の会場へ急いだ。

電車の中は花火大会へ行く人々で埋め尽くされている。
ひしめき合う電車の中、甲斐は懸命にバランスを保っている沙紀の手を取った。


小さく笑い、沙紀もまた甲斐の手に応える。



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