恋する*memory〜記憶をなくしたわたし〜【完結】
「っ……い、や……」
龍くんは、どうすることも出来なくて立ち尽くしていた。
わたしも同じで……泣くことしかできなかった。
「おい……どうした?」
部屋の外から煌くんの声が聞こえた。
「それが………」
「愛依!?」
愁さんが説明しようとしたら、先に煌くんが中の様子を見たようでわたしに近づいた。
煌くん……?
「待て!!」
愁さんの声が聞こえたけど……わたしは吸い寄せられるように、煌くんに抱きついた。
「愛依……?」
「き、らくん……っ…きら、く……」
最初は驚いていた煌くんだったけど、優しく抱き締めかえしてくれた。
知ってる……わたし、この腕……
安心……できる……
しばらくこうしていると、体の震えも、心臓の音もいつも通りに戻っていた。
「何があった?」
優しく問いただしてくる煌くん。
「わ、からない……自分でも……」
「そうか……」
煌くんは、わたしが落ち着いたことを確認して体を離した。