最愛レプリカ
気付かれないように小さく溜息をつく。
そしてニッコリと笑いかけ、頭を下げる。
「すみません、失礼します。」
「えっ、待って待って!」
そのまま階段を下りようとした時、クラスメイトの一人が私に声をかけて擦り抜けて行った。
「ちぃ、ばいばい!」
「あ、うん。ばいばい。」
津村は私の顔をじっと見ていた。釘付け、と言っても良いくらいだ。
「“ちぃ”っていうの?」
「…はい。そう呼ばれてます。」
津村はそう…、と答えたきり黙ってしまった。
私はそんなことはお構いナシに、もう一度さっと頭を下げてその場を去った。