最愛レプリカ

気付かれないように小さく溜息をつく。
そしてニッコリと笑いかけ、頭を下げる。


「すみません、失礼します。」

「えっ、待って待って!」


そのまま階段を下りようとした時、クラスメイトの一人が私に声をかけて擦り抜けて行った。


「ちぃ、ばいばい!」

「あ、うん。ばいばい。」


津村は私の顔をじっと見ていた。釘付け、と言っても良いくらいだ。


「“ちぃ”っていうの?」

「…はい。そう呼ばれてます。」


津村はそう…、と答えたきり黙ってしまった。

私はそんなことはお構いナシに、もう一度さっと頭を下げてその場を去った。
< 18 / 113 >

この作品をシェア

pagetop