最愛レプリカ

今日はなんだか妙な日だった。特にあの津村っていう実習生。これから何度も会わなければいけないのか。

あぁ、欝陶しい。


ハァッと大きく溜息をついた。昼間に上がった気温の名残の中に、じわりと紛れて溶けていく。


子供の多い住宅地を進むと、白い壁の三角屋根の可愛い家がある。
これがわが家。

玄関の扉を開け、後ろ手でパタンと閉める。

「ただいま。」

幅の狭い階段を上がり、廊下の一番奥にある自室に入る。

私の中でピンと張られた細い糸がプツリと切れる。
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