最愛レプリカ

朋美の警戒心を振り切るかのように、男性は眩しく笑った。


「俺、今日から実習に来たんだ。よろしくな!」


あぁ、今日から来るっていう教育実習生の一人なのか。

ふと朋美を見ると先ほどまでの警戒の色は無く、その実習生の笑顔に顔を赤らめていた。

本当にこの子の表情はコロコロ変わって面白い。

ところで、実習生って色々と準備があるはずだ。こんな所で油売ってて良いのかな。


「あの、時間大丈夫なんですか?」


私がそう声をかけると、朋美の方に向いていた実習生の視線が私に移された。

目が合うと、実習生は一瞬動きを静止した。なんだか驚いたようにも見えた。

けれどすぐにハッとして左手首を目の前にかかげ、腕時計を覗き込んだ。
< 6 / 113 >

この作品をシェア

pagetop