最愛レプリカ

重い空気を晴らそうとしてか、津村がおどけたように言う。


「俺の前では素直で居てくれるんじゃなかったのか?」


なんて酷な台詞を吐くのだろう。自分は私に嘘をついているくせに。

もう無理だ。堪えられない。

そして私はついに核心に触れてしまう。


「……知ってたんでしょ?私が吉岡千尋の妹だってこと。」


ヒュッと風が通り抜けた。それは津村と私の間を貫くように鋭く感じた。

言葉を失った様子の津村に私は続ける。


「私を構うのは、姉に似てるからなんでしょ……?」
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