透明がきらめく
「とーこちゃん何も言わないから聞かなかったけど!久保田くんと何があったの?」
「いつも仲良く教室帰ってくるのに今日に限ってぎこちなかったし、そのくせなんか手繋いでるし」
「いや別に手を繋いでたわけでは無いんだけど」
「とーこちゃんこの際嘘と秘密はなしだよ!」
タマちゃんのまんまるくりくりの目が私の顔にぐいっと近づいて来た。
吉川もスマホこそいじってはいるが、目は完全に私を捉えている。
タマちゃんや吉川とは高校に入学した時から仲が良くて、鈴原くんや他のクラスメイトたちとは信頼の度合いが違う。
況してや吉川に関しては中学時代からの友達で、この高校に入学しようと2人で決めて一緒に受験勉強をした仲だ。
2人が今から久保田とのことを話そうが誰かに言いふらしたり興味本位で首を突っ込んで来たりしない人だと言うことはわかっていた。
いつか2人を頼って話すことになるなら、今のうちに話してしまった方がいいのかもしれない。
じっと黙り込んで考えた結果、2人には話す必要があると言う結論に達した。
結局1人だけで理解できないことが私1人で解決出来るはずが無いのだ。
「久保田に」
告白された。
そう言い切ろうとした時、タマちゃんの久保田くんだと言う声と重なった。
すらりと細く伸びるタマちゃんの人差し指の先には、青のリボンをつけた女の子といつも通り気だるそうな久保田がいる。
2人で並んで歩いているが、財布を持ち合わせていないところからして自動販売機に用事があったわけではなさそうだ。
うちの高校は学年ごとにリボンとネクタイの色が分かれていて、私たち2年生は赤。
そして青のリボンは1年生の証拠。
さらさらの黒髪になんだか見覚えがある気がするが思い出せない。
それよりも仲睦まじく久保田と女の子のことが気になって仕方が無い。
「え、なにあの子だれ?」
「や、知らないけど、」
その時ふと一度だけ久保田の恋愛遍歴を聞いたことがあったことを思い出した。
告白された回数は数え切れないが、付き合った女の子はたったの2人。
しかもデートも手をつなぐのも断り、しまいには隣を歩きたくないからと言い出す始末で長続きした試しが無いそうだ。
何故そんなにモテるのに適当なのかと聞けば、久保田は当然だと言う顔をして興味が湧かないからだと言った。
そんな久保田が隣を歩くと言うことはあの女の子には少なからず興味があると言うことになる。
昨日の昨日に私に告白をしておきながら、だ。