透明がきらめく
振り向くとシューティングをしていたはずの久保田が私の真後ろに立っていた。なんでも私が無謀なシュートの仕方をしているのが気になって仕方がなかったらしい。
馬鹿にしたようにケラケラ笑う久保田の鳩尾に弱くパンチを入れてから、彼が手にしていたボールをふんだくる。
そして有名なバスケ漫画の左手は添えるだけという名言を思い出しつつ、もう一度同じようにシュートを打つ。
しかしヘロヘロの軌道を描いたボールはまた同じように床に転がった。 不服の表情を浮かべる私の顔を見て久保田はまたケラケラ笑う。
「あのな、お前筋力皆無の腕のくせに片手で打とうとするから届かねえんだよ。あと膝使え」
「ぎゃ!」
どこからともなくボールを持ってきた久保田は私の頭の上にボールをセットして、私に膝かっくんを食らわせた。真っ直ぐと立っていた私はあっという間に床に崩れ落ちる。
そんなことは勿論御構い無しの久保田は、一度渡しを見下すとひたいにボールを当ててからそのまま両手でボールを放った。
ボールはリングに向かって吸い込まれて、行くのかと思いきやまさかの大暴投でボードの後ろに入ってしまい、がしゃんがしゃんと賑やかな音を立てた。
「下手じゃん」
「馬鹿言うなよ。両手で打ったの小学生以来だわ」
そのまま元に戻ってきたボールを今度は立ち上がった私の額の前でセットする。
さっさと持てと目で促されて、それを両手ではの時に掴み今度は膝かっくんをされないように膝を曲げれば、ケツが出てると叩かれた。
ボールを持ち慣れていない私の手首はグラグラと揺れるが、それが目についたらしい久保田が後ろから支えるが、想像以上に久保田の体が背中にくっついてゾワゾワとする。
少しTシャツが湿っていて気持ち悪いだとか、腕まくりしている腕に汗をかいているせいでしっとりしているし、それがまた私の腕に絡まって寒気がする。
いや、これは寒気ではない。なんと説明して良いのかわからないが、取り敢えず動悸が激しくて鳥肌が立っている。
「…んで腕じゃなくて膝でって聞いてんのか」
「え、あ、うん!わかったから離れて!」
「…は?」
「近い!」