アカイ花†Vermilion Flower

今にも泣きそうな目をして、グッと堪えながら小さい里湖はそう言った。

そして、母や妹の悲しみに決してつられることのないように一点を見つめ小さな胸に悲しみを閉じ込めて、今も、父を想って泣く事はない。


『リコはね、アッちゃんのおよめさん
 になりたいよ』

『レイもなりたい』

『そうなの?

 レイもアッちゃんのおよめさんに
 なりたいの?

 だったら、リコは・・・』


その場にしゃがんだ浅緋は、幼い里湖の両手を取って向き合い、目と目を合わせながらゆっくりとした口調で話して聞かせる。


『リコ、よく聞けよ

 自分の好きなものを諦めたり
 大切なものを手放したりしたら
 お前は、ずっと苦しむぞ

 それでも、いいのか?』

『アッちゃん
 くるしむって言うのは・・・』


浅緋は繋いだ手を解き、自分の胸元を強く押さえた。
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