アカイ花†Vermilion Flower
私は今夜、自分に芽生えた想いを隠す事できなくて
一番大切な貴方を傷つける。
チャラン・・・鍵の音・・・
「そういうことか・・・」
浅緋は、電車に乗り歩いて私に会いに来てくれたようで、額に汗をかいていた。
苦痛に歪む浅緋の顔を見て私は、違うの・・・そう言いかけたけど、何も違わないことに気がついて言葉を飲み込んだ。
「アサヒ、すまない
俺は、お前の婚約者である
リコちゃんを愛してしまった」
「イズル、おまえ・・・」
「すまない、アサヒ
お前に何を言われても仕方ない
もう、親友じゃないと言われても
仕方ない
だけど、俺には
リコちゃんが必要なんだ
例え、一番の友の君を失っても・・・
大切なものを幾つ失ってもいいさ
リコが、俺の傍に在るなら
俺は生きて行ける」
いずるさんの深い悲しみ、その葛藤を知る浅緋には、いずるさんを責める言葉は出ては来ない。
浅緋は腹が立たない訳はなかったけれど、生きる意味を見出した友に罵声を浴びせることなどできなかった。