年上の彼と甘めの同棲生活
見られていることを意識している私に気づいたのか、涼くんが顔の横に垂れた私の髪を掬いあげる。
「気をつけて」
甘い声で囁く彼に、胸が高鳴る。
「ん、いってきます」
少し笑って、私も顔を上げた。
なんだか色めき立った声がかすかに聞こえた気がしたけれど、気にしない。
「ほんとはいってらっしゃいのキスしたいんだけど」
「ばかっ、そんなのしないっ!」
私を見送る彼がさらりとそんな事を言ってのけたので、私はその言葉をかき消すように言いながら顔に熱が集まっていくのを実感していた。
鞄を肩に引っ掛けて、涼しい顔でいってらっしゃいを言う涼くんを無視して、逃げるように生徒の波に紛れた。