Little Santa
派遣切りに遭ってからというもの、やること為すこと、俺は何をやっても精彩を欠いていた。
付き合っていた女にも振られ、金が底を突いた時の頼みにしていた車も車上荒らしに遭い、たまたま置き忘れていた財布とカーナビを盗まれる。
現金は小銭しか入れていなかったものの、カードが無ければ、銀行でなけなしの現金を引く事も出来ない。
通帳を捜すも、寮を追い出された一気で、何処に紛れ込んだのか、その一切合財はもう田舎に送ってしまった後だった。
携帯は止められ、田舎に電話しようにも、公衆電話が何処に在るのか、日頃気にも留めた事がない。
漸く田舎の両親に話を取継ぎ、当座を凌ぐ金を借りる事にしたのはいいが、住所が無くては送り様がない。
こちらで金を都合して田舎に帰るか、田舎から誰かに出て来てもらう事は出来たかも知れないが、俺には、住む場所のない人間においそれと金を貸せる知り合いが居なかったし、田舎の姉や両親も、易々と仕事に穴を空ける訳にもいかず、
……結局俺は、気が付くと唯の浮浪者になっていた。
その事実に一番驚いているのは、この俺自身だ。