皇帝のサイコロ
『そうだな』

知らない人と話している気分だ。

どこのカラオケ店へ行くかを決め、「それじゃあ後ほど」と短時間で電話は終わった。

ケータイをテーブルの隅に置き、乱暴に置いた箸をもう一度手に持ち直す。

昨日の晩ごはんの残りの、大根とワカメが入った味噌汁をズズッと飲んだ。

「青木くん?」

母が雑誌から顔をあげて聞いてきた。

「うん。昼からカラオケで会うことになった」

「晩ごはんは?」

「いらない」

「わかったわ。メモしておきましょ。間違えて作っちゃいそう」

そう言い、メモを書いて冷蔵庫にゆるキャラの磁石で張り付けた。
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