皇帝のサイコロ
「……実は俺、実家に帰ってきてから一度も働いてないんだ。コンビニでバイトしてるなんて嘘なんだ。ごめん」

視界には、箸置きに置かれた箸しか入らない。

みんながどんな顔をしているのか分からない。

暫しの沈黙の後、ようやく母が口を開いてくれた。

「今までバイトに行ったふりして、ただ外をぶらついてたの?」

母の声がやけに優しく聞こえる。

「本当にごめん。パチンコにのめり込んで、500万も借金作ってるんだ!!」

普段では考えられないほどの大粒の涙がボロボロとこぼれた。

「500万!?何考え――」

「有紗」

父の渋く低い声に有紗は口を閉じた。
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