皇帝のサイコロ
「……そう、ね」

その言葉は心に重く響いた。

ごめんなさい。

こんな風に育って。

ごめんなさい。

育ててくれたのに。

そう考えるとまた涙が溢れて嗚咽がでた。

「慎。下を向くな。顔をあげろ。わしの目を見ろ」

小学生のように服の袖で涙と鼻水を拭い、顔をあげた。

父の目を見つめる。

しかし涙ですぐに父はぼやけた。

「わしもこれから借金を返すために頑張るからな。有紗やお母さんにも負担をかけるだろう。苦しいのはお前だけじゃないんだ。これから働け」
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