皇帝のサイコロ
「泣くなよ」

「お兄ちゃんこそ、もう涙止めなさいよ」

ふふっ、と有紗が軽く笑った。

有紗の笑いにより、雰囲気が少し明るくなった。

「さ、二人とも泣き止んで。ね。有紗は早くお風呂入りなさい」

「はーい」

有紗がもう一度鼻水をすする音をさせて席をたった。

父も母も食器を片付け始めた。

「慎」

流しに食器を置いて戻ってきた母が俺の肩に手を置いた。

「もうパチンコなんてしないでね。約束よ」

「うん。約束する。本当にごめん」

「私のほうこそ、気付かなくてごめんね」
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