皇帝のサイコロ
階段をおりると、リビングから「おいしーい!」というわざとらしい、媚びたような女性の声が聞こえてきた。

テレビでグルメの特集でもしているらしい。

ドスドスと足音をたてて風呂場へ行き、洗剤を浴槽へ吹き付ける。

洗剤特有の匂いを吸い込むと、少し気分が晴れたように感じた。

腹いせにこいつをピカピカにしてやろう。

それから15分間、俺は浴槽を磨き続けた。


午後から曇り空だったため、洗濯物はまだ生乾きだった。

洗濯物をとりあえず全て室内にいれる。

そして鍵をかけた瞬間、昭から着信がきた。

「もしもし」

『いま終わった。僕の家で話すか?』

「え、良いのか?」
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