皇帝のサイコロ
「バイト決まったよ」

「本当に?どこの?」

そう言って母は俺を向いた。

「役場近くのカレー屋さん」

「そう、良かったわ。頑張ってね」

ニコッといつものやわらかい微笑み。

今なら謝れるかもしれない。

「あのさ」

「うん?」

「昨日はごめん」

「……私も言い過ぎた。ごめんなさいね」

微かな息に声をのせるようにそう呟いた母。

「いや、お母さんの言う通り、俺がおかしかった。ごめん。とりあえず明日からバイト頑張るから」

精一杯頑張ろう。

そう胸に誓った。
< 91 / 106 >

この作品をシェア

pagetop