僕は君のためにピアノを弾く
僕は、そんな彼女が、好きだ。

いや……

好きとか、愛してるとか、それよりもっと大きな言葉があればいいのに。

鍵盤を叩きながら、音色を流しながら、そんなことを思う。

奏でる音のひとつに、つむぐメロディの一節に、僕のおもいを乗せる。

ボレロじゃ乗せられない。

ノクターンのような悲しさは要らない。

ファンファーレのように軽くない。

ゆっくり、じっくり、おもい続けてきた心。

一音、一叩きに、それを込めたい。



いきなりカノンを弾いてくれとか言われて、驚いたは驚いた。

だけど、僕のピアノは初めから彼女のものなんだ。

初めて僕が覚えた曲が、きらきら星。

それを聞いた君が、こう言った。

「すっごい!」

と、たったそれだけ。でも嬉しかったのを覚えてる。

あの時の彼女の目が、星みたいに感激にきらきらしていたのも。

だから、僕のピアノは君のものだ。
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