瀬々悠の裏事情


過去に一度でも依頼をしてきた人物なら、名簿に詳細が残っている為、相手方に合わせることができ、また初回の依頼人に比べ勝手が利くという利点もあるので、比較的短期間で依頼遂行をしやすい。


「こっちの依頼は…」

「瀬々ちゃーん」


来客の相手をしていた智昭が、事務所に顔だけ出して瀬々を呼んだ。


「どうしたんスか?」

「悪いんだけど、お客さんを奥の部屋に案内しといてくれる?」


瀬々は席を立って傍に寄ると、智昭は小声でそう伝えた。


「いいッスけど……訳ありッスか?」

「んー微妙なとこかな」

「はぁ…」


曖昧に答えに、瀬々は智昭の陰に隠れて様子を伺う。
依頼人は男女二人組のようで、遠くからでは判断出来ないが、女の方は男の背に隠れながら周囲を見回していた。


「微妙なのかよく分かんないッスけど……とりあえず案内すればいいんスね」

「うん。準備が出来たら俺もすぐ行くから。なんなら少し聞き出しちゃってもいいよ」

「了解ッス。んじゃ行ってきやす」


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