瀬々悠の裏事情
「佐倉さんは新しいオルディネ担当で、お世話になってるんだ」
あかねは嬉しそうに答える。
オルディネはチームの一つで、かつては他チームを寄せ付けないほどの栄華を極めたが、ここ数年は衰退の一途を辿り、解散寸前と噂されていた。
しかし一ヶ月ほど前に、あかねが頂点に選ばれたことで息を吹き返し、現在異能社会で最も注目されているチームである。
「なるほどね。でもあかねっち一人で大丈夫なんスか?この前、殺されかけたって聞きやしたけど」
風前の灯火であったオルディネに再び活力を取り戻させたあかねは、史上最年少で頂点に選ばれたこともあり、瞬く間にその存在が知れ渡った。
とは言え、かつての勢いには遠く及ばないのが現状である。
しかしそれでも快く思わない連中がいるようで、頂点である彼女を抹殺しようと企てていることなど物騒な話を耳にしていた。
「殺されかけたっていうか、貰い物のお菓子に毒が入ってたり、学校帰りに知らない人に襲われかけただけだし」
「だけって、それ結構ヤバいと思いやすけど」
「んー…確かに警戒すべきとは思うけど、毎回誰かと一緒ってのは流石に堅苦しいというか。毒入りとかはアーネストさんが前もって異能で調べてくれるし、それにほら」
あかねは服の内から何かを取り出す。
それは十字架に形造られた黒石の首飾りだった。
おそらく強力な異能が込められている異能石だろう。
「ジョエルの異能石なんだけど、これが凄いの。それに私自身も、前より異能を使えるようになってるから大丈夫」
そう笑顔で断言するあかね。
状況を理解していないのか、それとも理解した上で本当にそう思っているのか。
その真意は掴みかねるが、彼女がそう言うなら大丈夫なのだろう。
瀬々はなんとなく、そんな気がした。
「瀬々は?何で調停局に?」
「ああ、ちょいと調べたいことがありましてね」
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