瀬々悠の裏事情
「え、意外。でも千秋さんは知ってるんでしょ?」
「もち。まぁ千秋さんは先輩のお得意様なんで接点があるというか。あ、そうそう!先輩といえば、あかねっちに会ってみたいって言ってやした」
「そうなの?私も瀬々の先輩見てみたい」
「じゃあ今度一緒にお昼でも食べません?可能ならアーネストさんも」
「アーネストさんも?」
あかねは不思議そうに首を傾げる。
「絶対面白いもんが見れるッスよ」
「ふふ、なんか楽しそう。帰ったら聞いてみるね」
ニヤつく瀬々に何を思ったのか、あかねも含み笑いをして賛同する。
そうこう話しているうちに一般対策部へ辿り着くが、おかしな事にそこには誰もいなかった。
「あれれ……」
瀬々は確かめるように時計を見る。
約束の時間通り一時を過ぎているが、再度見回しても千秋の姿どころか誰もいない。
「一人ぐらいいてもいいはずなんスけど」
「トイレとか?」
「ハッ!まさか長いーー」
「あら。こちらの部署に何か?」
瀬々が言い掛けた時、背後から凛とした声が聞こえ振り返る。
そこにはグレーのパンツスーツを着こなした女人がいた。
肩まである横髪に、後ろは外ハネショートと変わった髪型だが、髪色はダークブラウンと落ち着きがあり、強い意志を秘めたはっきりとした目許も相まって凛々しい印象を受ける。
「初めまして。瀬々と申します」
「瀬々?もしかして橘が言ってた子かしら」
どうやら話を通してくれていたようで、瀬々は頷く。
「申し訳ないんだけど、橘は急用が入って席を外しているの。すぐ戻って来ると思うから、少し待っててくれるかしら」
「分かりやした」
「紹介遅れたわ。私は香住里歌(カスミ リカ)。よろしくね」
里歌は自分から名乗り出ると、瀬々の隣にいたあかねに視線を移す。
「桜空さんよね?」
「あ、はい。そうです」
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