瀬々悠の裏事情

シュタットプラッツァは日本から遠く離れた異能によって創られた、異能者だけが住む絶海の孤島だ。
一般からの干渉を一切遮断し、異能者であっても島出身でない者は、いくつかの条件を満たさなければ、足を踏み入れることが出来ない未開の地である。
瀬々もその存在を耳にしたことは何度かあるが、当然ながら目にしたことも行ったこともないので、詳細は一切知らない。
ふと千秋を見れば、何故か不思議そうに目を丸くしていた。


「あれ、知りませんか?」

「基本的なことなら知ってやすけど、深いことはあんまり」


過去に興味本位で智昭に聞いたことはあるが、書物や資料に載っているようなものしか教えてくれなかったことを思い出す。


「ああ。確か智ちゃんは共存思考だったから、この島のことは結構嫌ってたっけ。なら仕方ないかな。桐島は元々シュタットプラッツァを創った複数の一族の一つなんですよ。現在日本において、異能者の存在はある程度認識され、差別など解決すべき問題はあれど、日々受け入れられつつあります。また異能者も一般人こと人間との共存を望む者が一定数いますから、それぞれの社会を形成しながらも、今のところ互いに容認しながら生活してますよね」


水面下での争いは絶えないが、それでも昔よりは確かに落ち着いている。
恐らく調停局やチーム・オルディネなどの共存を望む友好派の努力が形になっているのだろう。
現に瀬々が通う高校は一般の学校だが、異能者を受け入れて、交流の機会を積極的に設けている。


「ですが諸外国では、過去の迫害により絶滅寸前にまで追い込まれた異能者達は、表世界から一切姿を消し、今ではおとぎ話の住人です。つまり外国の異能者のほとんどは、シュタットプラッツァに住んでるんです。非常に保守的で厳しい規則が数多くあるみたいで、シュタットプラッツァで生まれた者は、死ぬまで島から出ることは許されない。とか普通にあるらしいですよ」

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