瀬々悠の裏事情
「はい。あと妹さんもいましたっけ。妹さんには会ったことないけど、皆さん美人ですよ」
「よく知ってやすね」
「一応ね。長女のソフィア様は、俺の従兄に嫁いでますし、次女のリシア様はこの調停局の外交部の副部長ですから」
「一応どころか、がっつり知り合いじゃないッスか」
「いやぁそれほどでも」
へらへらと笑う千秋に瀬々は溜息を零して、呆れを含んだ視線を送れば、彼の顔は更に笑みを増す。
「確かに橘は桐島とそれなりに関わりはありますが、俺は勘当された身ですからね。あんま関係ないんですよ」
そう言い切って、千秋は軽く目を伏せた。
何か思い出しているのだろうか。
智明を通じてではあるが、彼とは親しい間柄だと認識している。
しかし彼の内情までは知る由もなく、瀬々はその様子をただ見ているしかなかった。
「とまぁ……こんな感じですかね。他に聞きたいこととかあります?」
「交友関係とか?」
「めっちゃ広いですよ。学校でも人気者ですし」
「ッスよね。それでいてあの容姿なら、彼女とかも…」
陽一と同様に、洋子の存在も頭に過ぎる。
「んーいるやら婚約者じゃないですかね。まぁ陽一くんにそんな話は来てなかったはずだから、ワンチャンあるかもですけど」
「やっぱ七華は、そういうの決まってるもんなんスか?」
「ええ。まぁ大体そうですね。七華は純血を後世にまで残すことを念頭に置いてるし、その方がより強い異能者が誕生しますからね。ちなみに基本的に歳が近い者同士でそうなりますよ」
「へぇ」
ーー俺には絶対無理ッスね。
いくら純血を守る為とはいえ、生まれた時からその人生を、在り方を決められているなんて死んでも御免だ。
どんなに苦しくても、先が見えなくても、自分の判断で選択で道を決める。
それが出来ないのなら、生きている意味など無に等しい。
「まぁ中には、俺や姫みたいに相手がいない人もいますけどね」
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