・*不器用な2人*・
――少年漫画みたいだ。

心の中でそう思いながら、私はグラウンドを振り返る。

そこには中学の時の私が、不安そうに立っていた。

「大丈夫だよ」と私は小声で言う。

「今は不安でも、あなたは絶対に幸せを手に入れる。
辛いこととか哀しいこととか、たくさんあったと思うけれど、それに見合うだけの幸せがあと数年後には待っているから」

そう言う私を眺めながら、中学の私はその場に座り込む。

もうこのまま消えてしまいたいと泣いていた夜が何百とあった。

人生此処で終わっちゃうような、そんな気がしていた。

「大丈夫だよ、絶対。
あなたのお陰で今の私は幸せだから」

不幸だとか苦しさだとか、そういうものを知っているから、私は幸せというものに気付けた。

不登校で家からも出られなかった頃の惨めな私は、肩をすくめて少しだけ笑うと、視界から消えた。

――早く高校生になれると良いね。

心の中で呟いて、私はグラウンドに背を向けて歩き出す。














-end-
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