・*不器用な2人*・
第18話/再登校
教室へ入ると、めぐちゃんが大声を上げて立ち上がった。
椅子を蹴飛ばすようにして駆け寄ってきためぐちゃんは、息ができないくらい私を抱き締めてくれた。
「本当に心配したんだよ!!」
まるで家出していた子どもをしかるお母さんのような口調で言われて、私は気恥ずかしくなりながらも「ごめん」と笑った。
ふと自分の席へと視線をやると、淳君がこちらを見ていた。
私が小さく手を振ると、彼はつられるようにして手を振ろうとし、すぐに視線を机へと落とした。
「風野さん、大丈夫だった?
うちら授業ノートのコピーとっておいたんだけど、よかったら使う?」
話したことのなかったクラスメートたちが、ホッチキスで止めた紙束を持って席までやって来てくれた。
丁寧にポイントがまとめられたルーズリーフを見て、私は想わず感嘆する。
「ありがとう、すごく助かる。」
そう言うと、彼女たちは少しだけ口元を緩めてくれた。
昼休み。
めぐちゃんと一緒にDクラスへ行くと、教室から木山君と梶君が出て来るところだった。
彼らは私たちを見るとぎこちない笑みを浮かべる。
「せっかく綾瀬ちゃんが学校に来たんだから、一緒にお昼食べようと思って。」
めぐちゃんが顔の横にお弁当を掲げて笑うと、木山君もつられたように笑顔になる。
「そうだね。」
そう言う声は前よりもずっと静かだったけれど、穏やかな微笑を見ると私は少しだけホッとできた。
「そう言えば、遠足の行き先遊園地に決まったらしいよ。」
浅井君がたこさんウインナーに箸を突きさしながら言った。
その言葉に目を輝かせたのはめぐちゃんだけで、私も木山君も梶君も、あからさまにげんなりした表情を浮かべた。
「高校生にもなって遊園地ってキツくね?」
梶君の言葉に木山君が無言で頷く。
アクティブな生徒たちは楽しいかもしれないけれど、遊び慣れていない生徒からしてみれば一種の拷問だ。
「好きな人たちと回っていいらしいし、みんなで一緒に回ろうよ。」
めぐちゃんはそう言いながら私の両手をがっしりと掴む。
「私、乗り物ほとんど乗れないから荷物番でいい?」
私が苦笑混じりに言うと、木山君が「あ、ずるい」と小声で言った。
以前のように予鈴が鳴るまで明るくはしゃいで、私たちはそれぞれの教室へと別れた。
帰りのHRで、私のクラスでも担任が遠足の行き先を発表した。
「現地では自由行動だから、好きな人同士回れます。
全員にパスポートを渡すから、好きな乗り物に乗ることができます。」
パンフレットを配りながら担任が説明をすると、元々テンションの高いクラスメートたちが盛り上がり始める。
私はパンフレットを眺めながらボーッとしていた淳君の背中を突く。
彼は面倒そうに振り返り、「何?」と低い声で訊ねてくる。
「淳君、よかったら私たちと一緒に回らない?」
私がそう言うと、遠くの席から会話を聞いていたと思われるめぐちゃんが、「はぁ!?」と素っ頓狂な声をあげた。
淳君は一瞬ムッとしたような表情を浮かべてめぐちゃんを見た後、すぐ私に向き直る。
「なんか俺、歓迎されてないみたいなんだけど。」
彼の言葉に私は思わず笑みを浮かべた。
「めぐちゃんはそういう子だから大丈夫。」
また向こうでめぐちゃんが不服そうな声をあげるのが分かったけれど、それはあえて無視することにした。
淳君は眉間に皺を寄せたまま髪を乱暴に掻き、「分かった」と言った。
椅子を蹴飛ばすようにして駆け寄ってきためぐちゃんは、息ができないくらい私を抱き締めてくれた。
「本当に心配したんだよ!!」
まるで家出していた子どもをしかるお母さんのような口調で言われて、私は気恥ずかしくなりながらも「ごめん」と笑った。
ふと自分の席へと視線をやると、淳君がこちらを見ていた。
私が小さく手を振ると、彼はつられるようにして手を振ろうとし、すぐに視線を机へと落とした。
「風野さん、大丈夫だった?
うちら授業ノートのコピーとっておいたんだけど、よかったら使う?」
話したことのなかったクラスメートたちが、ホッチキスで止めた紙束を持って席までやって来てくれた。
丁寧にポイントがまとめられたルーズリーフを見て、私は想わず感嘆する。
「ありがとう、すごく助かる。」
そう言うと、彼女たちは少しだけ口元を緩めてくれた。
昼休み。
めぐちゃんと一緒にDクラスへ行くと、教室から木山君と梶君が出て来るところだった。
彼らは私たちを見るとぎこちない笑みを浮かべる。
「せっかく綾瀬ちゃんが学校に来たんだから、一緒にお昼食べようと思って。」
めぐちゃんが顔の横にお弁当を掲げて笑うと、木山君もつられたように笑顔になる。
「そうだね。」
そう言う声は前よりもずっと静かだったけれど、穏やかな微笑を見ると私は少しだけホッとできた。
「そう言えば、遠足の行き先遊園地に決まったらしいよ。」
浅井君がたこさんウインナーに箸を突きさしながら言った。
その言葉に目を輝かせたのはめぐちゃんだけで、私も木山君も梶君も、あからさまにげんなりした表情を浮かべた。
「高校生にもなって遊園地ってキツくね?」
梶君の言葉に木山君が無言で頷く。
アクティブな生徒たちは楽しいかもしれないけれど、遊び慣れていない生徒からしてみれば一種の拷問だ。
「好きな人たちと回っていいらしいし、みんなで一緒に回ろうよ。」
めぐちゃんはそう言いながら私の両手をがっしりと掴む。
「私、乗り物ほとんど乗れないから荷物番でいい?」
私が苦笑混じりに言うと、木山君が「あ、ずるい」と小声で言った。
以前のように予鈴が鳴るまで明るくはしゃいで、私たちはそれぞれの教室へと別れた。
帰りのHRで、私のクラスでも担任が遠足の行き先を発表した。
「現地では自由行動だから、好きな人同士回れます。
全員にパスポートを渡すから、好きな乗り物に乗ることができます。」
パンフレットを配りながら担任が説明をすると、元々テンションの高いクラスメートたちが盛り上がり始める。
私はパンフレットを眺めながらボーッとしていた淳君の背中を突く。
彼は面倒そうに振り返り、「何?」と低い声で訊ねてくる。
「淳君、よかったら私たちと一緒に回らない?」
私がそう言うと、遠くの席から会話を聞いていたと思われるめぐちゃんが、「はぁ!?」と素っ頓狂な声をあげた。
淳君は一瞬ムッとしたような表情を浮かべてめぐちゃんを見た後、すぐ私に向き直る。
「なんか俺、歓迎されてないみたいなんだけど。」
彼の言葉に私は思わず笑みを浮かべた。
「めぐちゃんはそういう子だから大丈夫。」
また向こうでめぐちゃんが不服そうな声をあげるのが分かったけれど、それはあえて無視することにした。
淳君は眉間に皺を寄せたまま髪を乱暴に掻き、「分かった」と言った。