・*不器用な2人*・
第20話/気付ける人
「どうしてめぐちゃんは淳君のことを嫌うの?」
記録をしていると、最近仲良くなった女子たちが周りに集まってくる。
私を笑わせたいという女子たちが、つまらない一発ギャグを周りで披露していたけれど、それらを一切無視してめぐちゃんを振り返る。
ずっと腕組みをして走る男子たちを見ていためぐちゃんは、作り笑いのまま答えた。
「性格的に気に入らない。
なんか暗いし卑屈だし。
そのクセみんなの仲間に入れないことをちっとも気にしていないところとか気に入らない。」
随分と言いぐさだと思ってしまったけれど、めぐちゃんの境遇を思い出すとそれも仕方がないことかもしれない。
彼女の言葉に女子たちがケラケラと笑い声をあげた。
「でも格好いいじゃん、木山君。
D組の木山君と双子なんでしょ?若干似てるよね。」
女子の言葉にめぐちゃんが唇をとがらせながら、「全然」と答えた。
それから小さく俯いて、彼女は誰にも聞こえニアような小声で言う。
「雰囲気とか全然違うよ。」
その言葉に振り返ると、めぐちゃんは拗ねたような表情のまま地面を眺めていた。
体育が終わる頃、私は記録を先生に渡して一足先にグラウンドを出た。
保健室に休憩させてもらったお礼を言いに行くと、保険医さんが慌てたように私へと駆け寄って来た。
「木山君、退室してから授業戻ってないの?」
サボリがバレてしまったのだと思うと、自分のことではないのに背筋がひんやりとした。
けれど、保険医さんはそんなことを咎めようとはしていなかった。
「大丈夫かな。
授業に戻る途中で具合が悪くなっちゃったとか……。」
そう言う彼女に、私は先ほどめぐちゃんが言っていたように「仮病だったんじゃないですか?」と冗談めかして答えた。
その言葉に保険医さんは真剣な表情のまま私を見て、言う。
「仮病か仮病じゃないかなんて、一目見れば分かるよ。
本当に辛い人は、辛いって顔に書いてあるんだよ。」
私は、彼が先ほど寝ていたベッドを見る。
「風野さんは、そういうことに気付いてあげられる人なんじゃないかな。」
保険医さんに言われ、私は思わず「は?」とめぐちゃんのように不愉快な声を出してしまった。
そんなことあるはずがないと思った。
「さっき同じクラスの子が迎えに来た時。
風野さんはずっと木山君の方を気にしていたように見えたけれど。」
そう言われ、私は慌てて首を振った。
「気のせいですよ。それ。」
わざと無神経な声を出して答える。
「私だってめぐちゃんと一緒で、淳君のことなんてまったく気付いてなかったし……。」
そう言いながら、自分が何に対して言い訳をしているのかふと疑問に思った。
保険医さんはジッと私を見つめていたが、やがてゆっくりと椅子へと戻った。
「今はそうじゃないとしても、風野さんはそういう人になれると思うよ。
少なくとも私はなってほしい。」
保険医さんはそう言うと、体質記録のところに私の名前を書いた。
記録をしていると、最近仲良くなった女子たちが周りに集まってくる。
私を笑わせたいという女子たちが、つまらない一発ギャグを周りで披露していたけれど、それらを一切無視してめぐちゃんを振り返る。
ずっと腕組みをして走る男子たちを見ていためぐちゃんは、作り笑いのまま答えた。
「性格的に気に入らない。
なんか暗いし卑屈だし。
そのクセみんなの仲間に入れないことをちっとも気にしていないところとか気に入らない。」
随分と言いぐさだと思ってしまったけれど、めぐちゃんの境遇を思い出すとそれも仕方がないことかもしれない。
彼女の言葉に女子たちがケラケラと笑い声をあげた。
「でも格好いいじゃん、木山君。
D組の木山君と双子なんでしょ?若干似てるよね。」
女子の言葉にめぐちゃんが唇をとがらせながら、「全然」と答えた。
それから小さく俯いて、彼女は誰にも聞こえニアような小声で言う。
「雰囲気とか全然違うよ。」
その言葉に振り返ると、めぐちゃんは拗ねたような表情のまま地面を眺めていた。
体育が終わる頃、私は記録を先生に渡して一足先にグラウンドを出た。
保健室に休憩させてもらったお礼を言いに行くと、保険医さんが慌てたように私へと駆け寄って来た。
「木山君、退室してから授業戻ってないの?」
サボリがバレてしまったのだと思うと、自分のことではないのに背筋がひんやりとした。
けれど、保険医さんはそんなことを咎めようとはしていなかった。
「大丈夫かな。
授業に戻る途中で具合が悪くなっちゃったとか……。」
そう言う彼女に、私は先ほどめぐちゃんが言っていたように「仮病だったんじゃないですか?」と冗談めかして答えた。
その言葉に保険医さんは真剣な表情のまま私を見て、言う。
「仮病か仮病じゃないかなんて、一目見れば分かるよ。
本当に辛い人は、辛いって顔に書いてあるんだよ。」
私は、彼が先ほど寝ていたベッドを見る。
「風野さんは、そういうことに気付いてあげられる人なんじゃないかな。」
保険医さんに言われ、私は思わず「は?」とめぐちゃんのように不愉快な声を出してしまった。
そんなことあるはずがないと思った。
「さっき同じクラスの子が迎えに来た時。
風野さんはずっと木山君の方を気にしていたように見えたけれど。」
そう言われ、私は慌てて首を振った。
「気のせいですよ。それ。」
わざと無神経な声を出して答える。
「私だってめぐちゃんと一緒で、淳君のことなんてまったく気付いてなかったし……。」
そう言いながら、自分が何に対して言い訳をしているのかふと疑問に思った。
保険医さんはジッと私を見つめていたが、やがてゆっくりと椅子へと戻った。
「今はそうじゃないとしても、風野さんはそういう人になれると思うよ。
少なくとも私はなってほしい。」
保険医さんはそう言うと、体質記録のところに私の名前を書いた。