・*不器用な2人*・
第35章/文化祭
文化祭当日。
もうすぐ一般客が入って来るというのに、Dクラスの前では男子たちが揉めていた。
店番の割り振りに文句があるらしい生徒たちが、木山君に突っかかっていて、野球部のメンバーたちが止めに入っていた。
あれ依頼木山君のことを避けている私は、彼らの傍に行くこともせず、Aクラスが使うA棟へと移動する。
隣りを歩いていためぐちゃんが不審そうな表情で「綾瀬ちゃん、木山と何かあったの?」と聞いてきたけれど、私は「何でもない」と短く答えた。
私たちに気付いた梶君が駆け寄って来る。
「風野、日野、ごめん。
今日一緒に回りたかったんだけど、俺多分1日中店番だ。」
顔の前で手を合わせる梶君イン、めぐちゃんが「え、何で!?」と素っ頓狂な声をあげた。
「木山が今日店番できなくなったんだけど、他の奴もやりたくないって言い出して。
俺、文化祭委員だから代わりにやることになっちゃった。」
何処までもお人好しな梶君に私とめぐちゃんは唖然としながらも、「頑張って」と言うことしかできなかった。
「木山君、何で店番やらないんだろ。兄弟揃ってサボり癖ってわけ?」
お茶の準備をしながらめぐちゃんが不満げに唇を尖らせると、女子たちにこき使われて荷物運びをしていた淳君が「一緒にすんな!」と怒鳴る。
私は木山君の悪口ばかり考えながらも、笑顔でめぐちゃんをなだめていた。
「Dクラスって何やるの?」
準備室に入って来た猿渡さんがめぐちゃんに訊ねると、めぐちゃんは「向こうも喫茶店やるらしいよ」と答えた。
私とめぐちゃんは昼から店番なので、淳君と猿渡さんに後を任せてA棟を後にした。
文化祭地図を見ながら適当なお店を見て回っていると、浅井君と井上君に会った。
「2人は店番やらなくていいの?」
めぐちゃんに聞かれて、井上君が笑いながら浅井君の頭を片手で押さえつける。
「こいつが同級生に会うと不味いからってことで、梶君が店番免除してくれた。」
此所まで来ると彼のいい人っぷりに呆れてしまう。
「木山君、どうして店番やらないの?」
私が井上君を見上げると、彼はすぐに真顔に戻って首を傾げた。
「頭痛いからって言ってたよ。
木山君のことだから仮病とかじゃないと思うけど。」
井上君が言うと、浅井君が横で苦笑いをしながら「仮病だろ」と言う。
それから、フッと浅井君が思い出したように顔を上げる。
「そういえば、誰にも言うなって木山言ってたわ。
風野さんもめぐも内緒にしといて」
浅井君はそう言うと、めぐちゃんの頭をポンポンと撫でて井上君と一緒に歩いて行ってしまった。
めぐちゃんはまんざらでもなさそうな表情で撫でられた頭をそっと触りながら唇を尖らせた。
「梶君っていい人だね。」
めぐちゃんに言われ、私は彼女を振り返る。
「綾瀬ちゃん、幸せになってね。」
めぐちゃんはそう言って笑うと、私に抱きついて来る。
急にいい人になっためぐちゃんに戸惑いながらも、私は笑いながら頷いた。
もうすぐ一般客が入って来るというのに、Dクラスの前では男子たちが揉めていた。
店番の割り振りに文句があるらしい生徒たちが、木山君に突っかかっていて、野球部のメンバーたちが止めに入っていた。
あれ依頼木山君のことを避けている私は、彼らの傍に行くこともせず、Aクラスが使うA棟へと移動する。
隣りを歩いていためぐちゃんが不審そうな表情で「綾瀬ちゃん、木山と何かあったの?」と聞いてきたけれど、私は「何でもない」と短く答えた。
私たちに気付いた梶君が駆け寄って来る。
「風野、日野、ごめん。
今日一緒に回りたかったんだけど、俺多分1日中店番だ。」
顔の前で手を合わせる梶君イン、めぐちゃんが「え、何で!?」と素っ頓狂な声をあげた。
「木山が今日店番できなくなったんだけど、他の奴もやりたくないって言い出して。
俺、文化祭委員だから代わりにやることになっちゃった。」
何処までもお人好しな梶君に私とめぐちゃんは唖然としながらも、「頑張って」と言うことしかできなかった。
「木山君、何で店番やらないんだろ。兄弟揃ってサボり癖ってわけ?」
お茶の準備をしながらめぐちゃんが不満げに唇を尖らせると、女子たちにこき使われて荷物運びをしていた淳君が「一緒にすんな!」と怒鳴る。
私は木山君の悪口ばかり考えながらも、笑顔でめぐちゃんをなだめていた。
「Dクラスって何やるの?」
準備室に入って来た猿渡さんがめぐちゃんに訊ねると、めぐちゃんは「向こうも喫茶店やるらしいよ」と答えた。
私とめぐちゃんは昼から店番なので、淳君と猿渡さんに後を任せてA棟を後にした。
文化祭地図を見ながら適当なお店を見て回っていると、浅井君と井上君に会った。
「2人は店番やらなくていいの?」
めぐちゃんに聞かれて、井上君が笑いながら浅井君の頭を片手で押さえつける。
「こいつが同級生に会うと不味いからってことで、梶君が店番免除してくれた。」
此所まで来ると彼のいい人っぷりに呆れてしまう。
「木山君、どうして店番やらないの?」
私が井上君を見上げると、彼はすぐに真顔に戻って首を傾げた。
「頭痛いからって言ってたよ。
木山君のことだから仮病とかじゃないと思うけど。」
井上君が言うと、浅井君が横で苦笑いをしながら「仮病だろ」と言う。
それから、フッと浅井君が思い出したように顔を上げる。
「そういえば、誰にも言うなって木山言ってたわ。
風野さんもめぐも内緒にしといて」
浅井君はそう言うと、めぐちゃんの頭をポンポンと撫でて井上君と一緒に歩いて行ってしまった。
めぐちゃんはまんざらでもなさそうな表情で撫でられた頭をそっと触りながら唇を尖らせた。
「梶君っていい人だね。」
めぐちゃんに言われ、私は彼女を振り返る。
「綾瀬ちゃん、幸せになってね。」
めぐちゃんはそう言って笑うと、私に抱きついて来る。
急にいい人になっためぐちゃんに戸惑いながらも、私は笑いながら頷いた。