・*不器用な2人*・
第38章/11月
11月。
体育祭を控えたクラスはやけに盛り上がっていた。
めぐちゃんはあちこちの競技から引っ張りだこだったけれど、運動が苦手な私は玉入れ・綱引きなど、適当なものばかりを選んでいた。
「淳君は何に出るの?」
私が背中を突くと、淳君はゆっくりと振り返り「でない」ときっぱり答えた。
「俺運動とか苦手だし…できることなら当日は休みたい。」
そんなことを言いながらまた雑誌へと視線を戻そうとする淳君の首根っこを、猿渡さんが掴んだ。
「木山君はリレーのアンカーに選ばれているでしょ。」
満面の笑みで言われ、淳君が鬱陶しそうに顔を背ける。
「アンカーって…、淳君、それ1番大事な役割なんじゃ…」
呆気にとられる私に、猿渡さんが出場表を見せてくれる。
クラス対抗リレーには、確かに淳君の名前が書かれていた。
「体育の授業はサボっているからバレなかったけどね、4月にあった体力測定の結果がしっかりと残っていたんだー。
だから容赦なく入れさせてもらったの。」
猿渡さんは高笑いをしながら淳君の背中をばしばしと叩くと、去って行ってしまった。
「俺と井上と梶は騎馬戦に出るんだけどさー」
ジュースをすすりながら浅井君がチラリと木山君を見る。
涼しい顔で箸を口に運んでいた木山君が、ゆっくりと浅井君を見返した。
「木山、どの競技にも出ないって言い出すんだよ。
有り得ないよね。」
彼の言葉にめぐちゃんが「兄弟揃って…」と低い声で呟いた。
木山君は淳君と比べられたことに一瞬ムッとした表情を浮かべたものの、すぐにいつもの笑顔に戻る。
「俺は運動とかそういうものに適さないの。
大体、こんな極寒の中でジャージ着用禁止なんて、悪魔の所業だよね。」
私たちの体育祭は、半袖半ズボンで参加することが規定とされていた。
自分の競技じゃない時はジャージ着用も許可されているものの、競技に参加する時は全員同じ格好をしなくてはいけない。
私のクラスの生徒たちも同じことをぼやいていたのを思い出す。
「あれはキツいよなー。
風邪ひくっつーの。」
梶君も笑いながらそう言い、飲み終わったジュースパックを片手で潰した。
その日のHR後。
「木山君も体育祭不参加って言ってたよ。」
私が昼休みの時のことを教えると、淳君が一瞬言葉を詰まらせた。
彼は何かを思い出したように目を見開いていたものの、すぐにいつも通り落ち着いた表情を浮かべて「だろうね」と言った。
「あいつ、特定の運動以外できないから。」
淳君は低い声でそう言うと、帰り支度を始める。
「淳君は、リレー、出るつもりなの?」
私が声を掛けると、彼は眉を大きくしかめた。
「絶対嫌。
当日は補欠に任せる。」
彼はきっぱりそう言うと、教室を出て行った。
体育祭を控えたクラスはやけに盛り上がっていた。
めぐちゃんはあちこちの競技から引っ張りだこだったけれど、運動が苦手な私は玉入れ・綱引きなど、適当なものばかりを選んでいた。
「淳君は何に出るの?」
私が背中を突くと、淳君はゆっくりと振り返り「でない」ときっぱり答えた。
「俺運動とか苦手だし…できることなら当日は休みたい。」
そんなことを言いながらまた雑誌へと視線を戻そうとする淳君の首根っこを、猿渡さんが掴んだ。
「木山君はリレーのアンカーに選ばれているでしょ。」
満面の笑みで言われ、淳君が鬱陶しそうに顔を背ける。
「アンカーって…、淳君、それ1番大事な役割なんじゃ…」
呆気にとられる私に、猿渡さんが出場表を見せてくれる。
クラス対抗リレーには、確かに淳君の名前が書かれていた。
「体育の授業はサボっているからバレなかったけどね、4月にあった体力測定の結果がしっかりと残っていたんだー。
だから容赦なく入れさせてもらったの。」
猿渡さんは高笑いをしながら淳君の背中をばしばしと叩くと、去って行ってしまった。
「俺と井上と梶は騎馬戦に出るんだけどさー」
ジュースをすすりながら浅井君がチラリと木山君を見る。
涼しい顔で箸を口に運んでいた木山君が、ゆっくりと浅井君を見返した。
「木山、どの競技にも出ないって言い出すんだよ。
有り得ないよね。」
彼の言葉にめぐちゃんが「兄弟揃って…」と低い声で呟いた。
木山君は淳君と比べられたことに一瞬ムッとした表情を浮かべたものの、すぐにいつもの笑顔に戻る。
「俺は運動とかそういうものに適さないの。
大体、こんな極寒の中でジャージ着用禁止なんて、悪魔の所業だよね。」
私たちの体育祭は、半袖半ズボンで参加することが規定とされていた。
自分の競技じゃない時はジャージ着用も許可されているものの、競技に参加する時は全員同じ格好をしなくてはいけない。
私のクラスの生徒たちも同じことをぼやいていたのを思い出す。
「あれはキツいよなー。
風邪ひくっつーの。」
梶君も笑いながらそう言い、飲み終わったジュースパックを片手で潰した。
その日のHR後。
「木山君も体育祭不参加って言ってたよ。」
私が昼休みの時のことを教えると、淳君が一瞬言葉を詰まらせた。
彼は何かを思い出したように目を見開いていたものの、すぐにいつも通り落ち着いた表情を浮かべて「だろうね」と言った。
「あいつ、特定の運動以外できないから。」
淳君は低い声でそう言うと、帰り支度を始める。
「淳君は、リレー、出るつもりなの?」
私が声を掛けると、彼は眉を大きくしかめた。
「絶対嫌。
当日は補欠に任せる。」
彼はきっぱりそう言うと、教室を出て行った。