・*不器用な2人*・
第41章/木山君
昼休み。
屋上に集まったのはいつおみょり少人数だったけれど、それでも私たちは賑やかに昼食をとった。
「この後は騎馬戦か、張り切って行こうな!」
午前中の殆どの種目に出場した割に、浅井君は1番元気だった。
疲れたように肩を落として黙っていた井上君と、黙々と箸を口に運んでいた梶君がやる気なさそうに「おー」と拳を空へと掲げた。
そろそろグラウンドへ戻ろうという話になった時だった。
数分前に屋上を出ていった野球部員が走って戻って来た。
「騎馬戦の人数が足りないから木山呼んで来いって先生が言ってる!」
立ち上がりかけていた梶君と浅井君が持っていた弁当箱を同時に地面へと落とした。
井上君には先に行ってもらうようにして、私は梶君と浅井君に付いて木山君を探しに向かった。
先ほど淳君を探した際、木山君には1度も会っていない。
いつも寄るような場所を一通り回った末、私たちは旧校舎の廃材置き場へとたどり着いた。
電気のついていない鬱蒼とした廊下の突き当たりで、たくさんの鉄パイプを背に木山君は眠り込んでいた。
「こんなところにいたのか…」
梶君が呆れたような表情を浮かべ、木山君へと近付いて行く。
私たちの足音が聞こえても木山君は気付かないのか眠り続けている。
「おい木山、起きろー」
梶君がふざけた調子で軽く木山君の肩を揺さぶる。
その直後だった。
木山君の悲鳴が廊下いっぱいに響いた。
私と浅井君は咄嗟に耳を覆う。
ギョッとしている梶君の腕を木山君は勢いよく振り払うと、いきなり梶君の顔面を殴りつけた。
よろけて後ずさりをした梶君が、慌てたように鼻をおさえる。
床にポタポタと血が零れた。
「ど、どうした木山…」
驚いたように浅井君が近付いて行こうとするのを、梶君が止める。
木山君自身も驚いたように、鼻血を垂らす梶君を凝視していた。
「ごめん…」
木山君が掠れた声でそう呟くのが辛うじて聞きとれた。
彼は低い声でごめんを繰り返し続ける。
すぐにその様子が普通じゃないということに気付いた。
私が人を呼びに行こうとした時だった。
急に木山君が胸元を両手で掴んで蹲った。
肩を小刻みに痙攣させていた木山君は、梶君にギョッとしたように目を見開いた。
「大丈夫か?」
そう言って木山君の肩を梶君が軽く持とうとした時だった。
木山君が勢いよく梶君を突き飛ばした。
廊下へと転がってギョッとした梶君に、木山君はもう1度ごめんと小声で呟いた。
そして次の瞬間にはゆっくりとうつぶせに倒れ込んだ。
屋上に集まったのはいつおみょり少人数だったけれど、それでも私たちは賑やかに昼食をとった。
「この後は騎馬戦か、張り切って行こうな!」
午前中の殆どの種目に出場した割に、浅井君は1番元気だった。
疲れたように肩を落として黙っていた井上君と、黙々と箸を口に運んでいた梶君がやる気なさそうに「おー」と拳を空へと掲げた。
そろそろグラウンドへ戻ろうという話になった時だった。
数分前に屋上を出ていった野球部員が走って戻って来た。
「騎馬戦の人数が足りないから木山呼んで来いって先生が言ってる!」
立ち上がりかけていた梶君と浅井君が持っていた弁当箱を同時に地面へと落とした。
井上君には先に行ってもらうようにして、私は梶君と浅井君に付いて木山君を探しに向かった。
先ほど淳君を探した際、木山君には1度も会っていない。
いつも寄るような場所を一通り回った末、私たちは旧校舎の廃材置き場へとたどり着いた。
電気のついていない鬱蒼とした廊下の突き当たりで、たくさんの鉄パイプを背に木山君は眠り込んでいた。
「こんなところにいたのか…」
梶君が呆れたような表情を浮かべ、木山君へと近付いて行く。
私たちの足音が聞こえても木山君は気付かないのか眠り続けている。
「おい木山、起きろー」
梶君がふざけた調子で軽く木山君の肩を揺さぶる。
その直後だった。
木山君の悲鳴が廊下いっぱいに響いた。
私と浅井君は咄嗟に耳を覆う。
ギョッとしている梶君の腕を木山君は勢いよく振り払うと、いきなり梶君の顔面を殴りつけた。
よろけて後ずさりをした梶君が、慌てたように鼻をおさえる。
床にポタポタと血が零れた。
「ど、どうした木山…」
驚いたように浅井君が近付いて行こうとするのを、梶君が止める。
木山君自身も驚いたように、鼻血を垂らす梶君を凝視していた。
「ごめん…」
木山君が掠れた声でそう呟くのが辛うじて聞きとれた。
彼は低い声でごめんを繰り返し続ける。
すぐにその様子が普通じゃないということに気付いた。
私が人を呼びに行こうとした時だった。
急に木山君が胸元を両手で掴んで蹲った。
肩を小刻みに痙攣させていた木山君は、梶君にギョッとしたように目を見開いた。
「大丈夫か?」
そう言って木山君の肩を梶君が軽く持とうとした時だった。
木山君が勢いよく梶君を突き飛ばした。
廊下へと転がってギョッとした梶君に、木山君はもう1度ごめんと小声で呟いた。
そして次の瞬間にはゆっくりとうつぶせに倒れ込んだ。