･*不器用な２人*･

第43章/２学期末

体育祭の代休があり、その翌日。

「体育祭が終わったと思ったらまた体育…」

めぐちゃんが大きく溜息をつきながら、申し訳程度のストレッチをする。

広々としたグラウンドの片隅で、女子はストレッチをノロノロとしていた。

その向こうでは男子たちがドッジボールをしている。

「あれから、鈴木たちに何かされた？」

めぐちゃんに訊ねられ、私は首を振った。

鈴木君たちの方から私を避けているらしく、一切話しかけられることはなかったし、顔すら合わせていない。

彼らの自尊心を傷付けてしまったという自覚はあったので、少しだけ申し訳ない気持ちはあった。

「そういえば今日、木山君って来てた？」

私が訊ねると、めぐちゃんは小声で「来てた」と答える。

「殴られた相手が梶君だったから、問題にはならなかったみたい……。」

めぐちゃんはつまらなさそうに言うと、小さく顔を顰めた。




鈴木君に呼ばれたのは、その日の昼休みだった。

校舎裏にと言われた時は瞬時に暴力を振るわれる!!と思ったものの、「殴ったりしねぇから」と付け加えられ、ホッとした。

それと同時に、私の失礼な考えが彼に伝わってしまったということが恥ずかしかった。

校舎裏には鈴木君以外誰もおらず、彼は壁にもたれて立っていた。

「悪かったな」

そう一言言われ、私はどう答えていいかも分からずに頷く。

「あいつら、悪気はないと思うし、許してやって」

そう言われ、私はもう１度頷いた。

「それだけ？」

訊ねると、「それだけ」と素っ気なく言われた。

校舎へと戻ろうとした時、フッと視界を淳君が横切った。

慌てて私が声を掛けると、彼はすぐに立ち止まる。

「何処行くの？」

私の問に淳君は困ったように笑い、「薫のとこ」と答えた。

薫、という聞き覚えのない言葉に私は首を傾げながらも彼のことを見送った。




季節の変わり目ということで、保健室を利用する生徒や休む生徒が増えてきた。

授業の進度も遅くなり、怠い日々となる。

屋上メンバーは誰１人欠席することなく極寒の中で昼食をとっていたものの、木山君は相変わらず学校へ来ていても一般性との前に出てこなくて、何処にいるのか見当も付かなかった。

12月に入ってしばらくしてからのこと。

放課後、下校途中に井上君の姿を見付けた。

梶君も浅井君も部活に行ったのに、１人だけ休んだのだろうか。

私が背後から声を掛けると、彼はゆっくりと振り返った。

「部活、休んだの？」

私が訊ねると、彼は小さく笑いながら頷く。

「どうしたの？」

風邪？と私が聞くと、彼は少しだけ沈んだ表情になり、「違うよ」と小声で言った。

「浅井に会いたくなくて」

井上君の口から出た言葉に、私は一瞬ポカンとしてしまった。