・*不器用な2人*・
第44章/クリスマスの朝
終業式は無事に終わり、屋上メンバーは校門で別れた。
「良いお年を!」
そんな挨拶を交わしたことから、彼らと年内に会うことはないのだということを察した。
家へ変えると、リビングのカレンダーに書き込みをした。
クリスマスと元旦に丸を付ける私を母は嬉しそうに眺めていた。
「綾瀬が友達と外で遊び回るようになるなんて…ちょっと嬉しいよね、パパ」
母に話を振られた父は渋い顔をして新聞から目を離さない。
「間違っても変な奴らとは付き合うなよ」
そう低い声で言われ私はムッとした。
「綾瀬の友達はみんないい子よ」
母が代わりにそう言ってくれたものの、父は訂正をしなかった。
クリスマスの朝。
待ち合わせた駅に、梶君はすでに来ていた。
「寒いね」
第一声はそんなものだった。
私は笑いながら頷いて、差し出された手を握る。
電車到着のアナウンスが流れ、私たちはタイミング良く滑り込んできた電車に乗ることができた。
電車発車のアナウンスが流れた時だった。
フードを目深に被った男性が2人、転がり込むようにして車内に乗り込んできた。
乗客がギョッとする中、扉は閉まり電車が動き始めた。
息を切らしながら扉の前に座り込む2人を、梶君がギョッとしたように見下ろす。
俄かに信じがたいというように、彼は小声で「木山兄弟?」と声を掛ける。
もう片方の腕をしっかりと握っていた男性がパッと顔を上げる。
フードの影が顔に掛かっていたものの、その顔は間違いなく淳君だった。
もう片方は顔を上げずにジッとしているものの、体格からして木山君に間違いはなかった。
「丁度良かった、梶…420円貸して」
淳君に言われ、梶君は「は!?」と素っ頓狂な声をあげる。
「さっき切符買わずに改札抜けて来ちゃったんだよ…。てか俺ら財布持ってねーし…」
梶君は暫く呆気にとられていたものの、やがて財布を取り出して1000円札を彼らに渡した。
「いや、だから420円…」
淳君が怪訝そうな表情でそうお札を突っ返そうとすると、梶君が大きく溜息をついた。
「財布ないなら帰りも困るだろ」
梶君の言葉に淳君は今更気付いたのか「あ…」と言ってから慌てて俯いた。
お礼も言わずに彼は1000円を受け取り、ポケットにツッコンだ。
「お前ら、何処まで?」
梶君に聞かれ、淳君は横に座ったまま動かない木山君をそっと見やる。
「薫、何処まで行く?」
淳君に訊ねられた木山君は顔を上げないまま「知らない」と答えた。
「でも、おじさんたちが探してるといけないし…」
淳君の言葉に木山君は苛立ったようにもう1度「知らない」と答えた。
私と梶君は目的地の駅で降りた。
淳君と木山君は電車の隅に座り込んだままだったけれど、扉が閉まる直前、木山君が少しだけ此方を振り返った。
閉まる扉の隙間から見えた彼の顔に、私は一瞬息を呑んだ。
木山君は目の周りに大きな痣を作って、顔の半分がうす紫色に覆われていた。
「事情、聞かないんだ」
私が言うと、改札へ向かっていた梶君が振り返り、肩をすくめた。
「聞いたら教えてくれると思う?あの2人が」
確かにそうだけど…。
俯く私の手を梶君がギュッと掴んだ。
「良いお年を!」
そんな挨拶を交わしたことから、彼らと年内に会うことはないのだということを察した。
家へ変えると、リビングのカレンダーに書き込みをした。
クリスマスと元旦に丸を付ける私を母は嬉しそうに眺めていた。
「綾瀬が友達と外で遊び回るようになるなんて…ちょっと嬉しいよね、パパ」
母に話を振られた父は渋い顔をして新聞から目を離さない。
「間違っても変な奴らとは付き合うなよ」
そう低い声で言われ私はムッとした。
「綾瀬の友達はみんないい子よ」
母が代わりにそう言ってくれたものの、父は訂正をしなかった。
クリスマスの朝。
待ち合わせた駅に、梶君はすでに来ていた。
「寒いね」
第一声はそんなものだった。
私は笑いながら頷いて、差し出された手を握る。
電車到着のアナウンスが流れ、私たちはタイミング良く滑り込んできた電車に乗ることができた。
電車発車のアナウンスが流れた時だった。
フードを目深に被った男性が2人、転がり込むようにして車内に乗り込んできた。
乗客がギョッとする中、扉は閉まり電車が動き始めた。
息を切らしながら扉の前に座り込む2人を、梶君がギョッとしたように見下ろす。
俄かに信じがたいというように、彼は小声で「木山兄弟?」と声を掛ける。
もう片方の腕をしっかりと握っていた男性がパッと顔を上げる。
フードの影が顔に掛かっていたものの、その顔は間違いなく淳君だった。
もう片方は顔を上げずにジッとしているものの、体格からして木山君に間違いはなかった。
「丁度良かった、梶…420円貸して」
淳君に言われ、梶君は「は!?」と素っ頓狂な声をあげる。
「さっき切符買わずに改札抜けて来ちゃったんだよ…。てか俺ら財布持ってねーし…」
梶君は暫く呆気にとられていたものの、やがて財布を取り出して1000円札を彼らに渡した。
「いや、だから420円…」
淳君が怪訝そうな表情でそうお札を突っ返そうとすると、梶君が大きく溜息をついた。
「財布ないなら帰りも困るだろ」
梶君の言葉に淳君は今更気付いたのか「あ…」と言ってから慌てて俯いた。
お礼も言わずに彼は1000円を受け取り、ポケットにツッコンだ。
「お前ら、何処まで?」
梶君に聞かれ、淳君は横に座ったまま動かない木山君をそっと見やる。
「薫、何処まで行く?」
淳君に訊ねられた木山君は顔を上げないまま「知らない」と答えた。
「でも、おじさんたちが探してるといけないし…」
淳君の言葉に木山君は苛立ったようにもう1度「知らない」と答えた。
私と梶君は目的地の駅で降りた。
淳君と木山君は電車の隅に座り込んだままだったけれど、扉が閉まる直前、木山君が少しだけ此方を振り返った。
閉まる扉の隙間から見えた彼の顔に、私は一瞬息を呑んだ。
木山君は目の周りに大きな痣を作って、顔の半分がうす紫色に覆われていた。
「事情、聞かないんだ」
私が言うと、改札へ向かっていた梶君が振り返り、肩をすくめた。
「聞いたら教えてくれると思う?あの2人が」
確かにそうだけど…。
俯く私の手を梶君がギュッと掴んだ。