・*不器用な2人*・
第46章/年末年始
冬休みの宿題を年内に終わらせることができた。

紅白歌合戦をボーッと見ていると、父親がリビングへとやって来た。

「綾瀬、明日は初詣に行くのか?」

カレンダーを見ながら訊ねられ、私は「うん」と答える。

内心では「そこに書いてあるでしょ」と思っていたけれど、怖いので口には出さないようにした。

「男と一緒にか?」

そう言われ、私は父親を振り返る。

「男子もいるし、女の子も一緒だよ」

父親は苦い顔のままジッと私を見ていた。

「付き合う相手はちゃんと選べよ。
万が一のことがあったら大学への推薦が貰えないかもしれない」

そう堅い声で言われ、ウンザリしながらも「はいはい」と答えておいた。

台所から年越し蕎麦を運んで来た母が父を軽く睨みながら「過保護ねぇ」と呟いた。

「前に綾瀬が学校休んだ時に来てくれた男の子、なかなか良かったじゃない」

母に耳打ちをされ、私は久し振りにあの時のことを思い出した。

木山君が謝りに来てくれた時、そう言えば母はやけに上機嫌だった。

どうやら彼は母のお眼鏡にかなうような人物だったらしい。

「木山君は彼氏じゃないよ」

私が言うと、母は「そうなの?」と驚いたように言った。

「ただの友達…クラスも違うし」

好きな歌手が出てきたのでテレビの音量を上げながら、私はそう答えた。

今年もあと数時間で終わる。

そう思うとなんだかしみじみとしてしまった。

たくさんの人と出会い、たくさんの経験をし、たくさんの幸せをもらった。そんな1年だった。

いつか大人になった時、私は人生の転機を「高校1年生の時」と言うだろう。

めまぐるしい成長を思い出しながら、私はホッと一息ついた。




翌朝。

7時に起きてリビングへ行くと、母が雑煮の支度をしていた。

「あけましておめでとう」

私がボソッと呟きながら椅子に座ると、「新年の挨拶くらいちゃんとしなさいよ」と小言を言ってきた。

すでに起きていた父は新聞の特別号を読みながら、「お年玉、そこに置いておいたぞ」とテーブルの隅を指さす。

――それこそちゃんと渡せよ。

そう思いながらも「ありがとう」と口先だけで言い、私はぽち袋を手元に寄せた。

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