・*不器用な2人*・
第49章/交錯
教室へ入ると、女子生徒たちが黒板の前でキャーキャーと騒いでいるところだった。
彼女たちは私とめぐちゃんに気付くと駆け寄って来て、私たちを取り囲む。
「井上君と浅井君が付き合ってるって本当?」
弾んだ声でいきなり聞かれ、私は絶句する。
どうしてそんな噂が広まってしまったのだろうか…。そう考え始める私の横で、何も知らないめぐちゃんが「はぁ!?」と眉を顰めた。
「確かにあの2人仲良いけど、そんな…別に付き合ってるわけではないでしょ」
「いやいや、Bクラスにあの2人と駅が一緒の子がいるんだけど、見たらしいよ」
「見たって何を」
めぐちゃんは不愉快そうに眉を顰めながら言う。
「2人が浅井君の家の前でキスしてるとこ」
めぐちゃんの表情が引きつるのが分かった。
つい先日浅井君をフッたばかりとは言え、やはり聞き流せるような話ではないらしい。
「見間違いじゃないの?」
私がそう言っても、彼女たちは「見間違いなんかじゃないって!」と言い張っていた。
めぐちゃんが徐々に不機嫌になっていくのを察して、私が困惑を始めた時だった。
「人様の名誉を傷付けるような噂流して何が楽しいの?」
教卓でクラスの男子に勉強を教えていた猿渡さんが、フッと顔を上げて言った。
ムードメーカーの彼女にキツい口調で言われ、騒いでいた女子たちが凍りつく。
「本人たちに確認もとっていないうちからそうやって噂流しちゃって、もしも違っていたらどう責任をとるの?
あなたたちは他人事で面白いかもしれないけれど、浅井君や井上君のことを好きな女の子が聞いたらショックを受けると思うよ」
女子たちは気まずそうに目配せをして、そそくさと自分たちの席へと戻って行く。
猿渡さんはめぐちゃんの肩を叩いて「ただの噂だよきっと」と笑った。
めぐちゃんも作り笑いのまま「そうだね」と答えたものの、その声の低さからは少しの余裕も感じとることができなかった。
「浅井君と付き合ってるって、本当なの?」
真冬のプールサイドは私とめぐちゃんと井上君以外誰もいなかった。
植え込みの影に落ちていた夏頃のものと思われる煙草の吸い殻は、すっかり兼職してしおれてしまっていた。
井上君はフェンスにもたれたままずっとめぐちゃんから視線を逸らしている。
「それって、日野さんに関係あるの?」
井上君は落ち着いた声でそう言ったものの、めぐちゃんの神経を逆撫でしてしまったらしい。
「関係あるに決まってるじゃん!だってもし本当だったら、井上君は私の代用品ってことになるんだよ?」
そう言われ、井上君の表情が少しだけ変わった。
「それなら、俺じゃなくて浅井に直接聞いた方が良いんじゃないの」
その通りだとその場にいた私も思ったけれど、めぐちゃんにはそれができなから大人しそうな井上君をこうして呼び出したのだろう。
悔しそうに井上君を睨みながら、めぐちゃんは彼の胸ぐらを掴み上げていた。
井上君も堅い表情のままめぐちゃんを見下ろしている。
彼女たちは私とめぐちゃんに気付くと駆け寄って来て、私たちを取り囲む。
「井上君と浅井君が付き合ってるって本当?」
弾んだ声でいきなり聞かれ、私は絶句する。
どうしてそんな噂が広まってしまったのだろうか…。そう考え始める私の横で、何も知らないめぐちゃんが「はぁ!?」と眉を顰めた。
「確かにあの2人仲良いけど、そんな…別に付き合ってるわけではないでしょ」
「いやいや、Bクラスにあの2人と駅が一緒の子がいるんだけど、見たらしいよ」
「見たって何を」
めぐちゃんは不愉快そうに眉を顰めながら言う。
「2人が浅井君の家の前でキスしてるとこ」
めぐちゃんの表情が引きつるのが分かった。
つい先日浅井君をフッたばかりとは言え、やはり聞き流せるような話ではないらしい。
「見間違いじゃないの?」
私がそう言っても、彼女たちは「見間違いなんかじゃないって!」と言い張っていた。
めぐちゃんが徐々に不機嫌になっていくのを察して、私が困惑を始めた時だった。
「人様の名誉を傷付けるような噂流して何が楽しいの?」
教卓でクラスの男子に勉強を教えていた猿渡さんが、フッと顔を上げて言った。
ムードメーカーの彼女にキツい口調で言われ、騒いでいた女子たちが凍りつく。
「本人たちに確認もとっていないうちからそうやって噂流しちゃって、もしも違っていたらどう責任をとるの?
あなたたちは他人事で面白いかもしれないけれど、浅井君や井上君のことを好きな女の子が聞いたらショックを受けると思うよ」
女子たちは気まずそうに目配せをして、そそくさと自分たちの席へと戻って行く。
猿渡さんはめぐちゃんの肩を叩いて「ただの噂だよきっと」と笑った。
めぐちゃんも作り笑いのまま「そうだね」と答えたものの、その声の低さからは少しの余裕も感じとることができなかった。
「浅井君と付き合ってるって、本当なの?」
真冬のプールサイドは私とめぐちゃんと井上君以外誰もいなかった。
植え込みの影に落ちていた夏頃のものと思われる煙草の吸い殻は、すっかり兼職してしおれてしまっていた。
井上君はフェンスにもたれたままずっとめぐちゃんから視線を逸らしている。
「それって、日野さんに関係あるの?」
井上君は落ち着いた声でそう言ったものの、めぐちゃんの神経を逆撫でしてしまったらしい。
「関係あるに決まってるじゃん!だってもし本当だったら、井上君は私の代用品ってことになるんだよ?」
そう言われ、井上君の表情が少しだけ変わった。
「それなら、俺じゃなくて浅井に直接聞いた方が良いんじゃないの」
その通りだとその場にいた私も思ったけれど、めぐちゃんにはそれができなから大人しそうな井上君をこうして呼び出したのだろう。
悔しそうに井上君を睨みながら、めぐちゃんは彼の胸ぐらを掴み上げていた。
井上君も堅い表情のままめぐちゃんを見下ろしている。