・*不器用な2人*・
喫茶店は観光客で賑わっていて、禁煙席が開いていなかったため、私たちはテラスで食べることになった。
オーダーしたメニューがやって来ると、みんなが次々と食べ始める。
頼んだサンドイッチが来てもボーッと皿を眺めている淳君を、めぐちゃんが小突いた。
「ムリして食べなくても残しとけば浅井君たちが食べてくれるよ」
淳君は慌てたように顔を上げてめぐちゃんと私を交互に見て、浅く頷いた。
「思ったんだけど、木山兄弟ってほんと小食だな」
浅井君が淳君に差し出されたお皿からサンドイッチを一切れとりながら言う。
「俺は薫ほどじゃないけど……」
淳君はボソッと呟きながら一口だけパンをかじり、すぐに皿の上へと置いてしまう。
「いや……兄ちゃんより酷いと思うぞお前」
梶君が笑いながら、淳君の皿から一切れとった。
「何も食べないくせによくそこまで背伸びたね」
井上君も自分より背が高い淳君をマジマジと見つめながら言う。
淳君は恥ずかしそうに俯いたまま、また少しだけサンドイッチを齧った。
このメンバーだからまさかとは思っていたけれど、野球部員たちは靴を脱いでズボンを折ると平然と海の中へと入って行った。
「やっべ、超冷たい」
そう言いながらまだ靴を脱いでいない浅井君に向かって梶君がハイテンションに水をかける。
怒った浅井君が脱いだ靴を勢いよく梶君の顔面へと投げつけ、しかも見事に命中した。
「綾瀬ちゃんってああいう男子が好きなの?」
めぐちゃんが呆れたように梶君を眺めながら聞いて来たので、私は即座に「違います」と答えた。
「こうして見てると私も入りたくなってきちゃう」
浅井君の襟の中にサッと昆布を入れる井上君を眺めながら私は小さく呟いた。
勿論する気はないけれど……。
「私もー。年甲斐なくはしゃいでみたいなー」
めぐちゃんもおっとりとした口調で言いながら海を眺める。
暫くは様子を窺っていた淳君も、やがては海へと入って行き、井上君と一緒に昆布や貝を拾っては浅井君に見せに行っていた。
「夏になったら、また来よっか。
したら私たちも入ろうよ」
めぐちゃんに笑顔で言われ、私はすぐに頷いた。
疲れたのか、暫くすると淳君が浜辺に戻って来た。
「どうだった?楽しかった?」
私が聞くと、彼はぐったりとしたまま首を横に振る。
「井上、あいつサイテ―だ……。俺の服の中にまで昆布入れてきやがった…」
真顔で言う淳君にめぐちゃんが遠慮なく笑いだす。
彼の濡れた服をからかいながらも、さりげなくタオルを貸してあげていた。
みんなが海から上がって来て、足を拭いて靴を履き直す。
「井上、お前今晩覚悟しとけよ」
いろんなメンバーから言われながらも、井上君は無表情のまま「はいはい」と返している。
「次何処行くー?」
めぐちゃんが言うと、男子たちが次々と聞き覚えのある名所を口にしていく。
市バスに乗って移動をする際、私は淳君の隣りになった。
「淳君、結局あの子とは付き合わなかったの?」
私が春休み少し前のことを思い出して訊ねると、淳君はぼーっとしたまま「誰のこと?」と聞き返して来た。
「前に告白されてたじゃん、クラスの子に」
私が言うと、淳君は思い出したように頷いて「返事すらしてない」と困ったように言った。
町で1番大きいと言われているショッピングモールは大勢の人でにぎわっていた。
「お泊まりなんて私初めてかも。
お菓子いっぱい買いこもうね」
めぐちゃんに笑顔で言われ、私も大きく頷く。
2人で1つのかごにポンポンとお菓子を詰めて行く。
それぞれ同室同士でみんな食料の買い込みをしていた。
梶君は淳君に「これは?」と1つずつ食材を見せていき、どれも首を横に振られてしまっていた。
浅井君と井上君は2人になった途端妙に無言になってしまって、かなりの距離を開けて歩いている。
普段は平然としている割に気にしているらしかった。
「修学旅行とか、春の遠足とか、これから楽しみがいっぱいだね」
その時は、そんなことを言っていた。
オーダーしたメニューがやって来ると、みんなが次々と食べ始める。
頼んだサンドイッチが来てもボーッと皿を眺めている淳君を、めぐちゃんが小突いた。
「ムリして食べなくても残しとけば浅井君たちが食べてくれるよ」
淳君は慌てたように顔を上げてめぐちゃんと私を交互に見て、浅く頷いた。
「思ったんだけど、木山兄弟ってほんと小食だな」
浅井君が淳君に差し出されたお皿からサンドイッチを一切れとりながら言う。
「俺は薫ほどじゃないけど……」
淳君はボソッと呟きながら一口だけパンをかじり、すぐに皿の上へと置いてしまう。
「いや……兄ちゃんより酷いと思うぞお前」
梶君が笑いながら、淳君の皿から一切れとった。
「何も食べないくせによくそこまで背伸びたね」
井上君も自分より背が高い淳君をマジマジと見つめながら言う。
淳君は恥ずかしそうに俯いたまま、また少しだけサンドイッチを齧った。
このメンバーだからまさかとは思っていたけれど、野球部員たちは靴を脱いでズボンを折ると平然と海の中へと入って行った。
「やっべ、超冷たい」
そう言いながらまだ靴を脱いでいない浅井君に向かって梶君がハイテンションに水をかける。
怒った浅井君が脱いだ靴を勢いよく梶君の顔面へと投げつけ、しかも見事に命中した。
「綾瀬ちゃんってああいう男子が好きなの?」
めぐちゃんが呆れたように梶君を眺めながら聞いて来たので、私は即座に「違います」と答えた。
「こうして見てると私も入りたくなってきちゃう」
浅井君の襟の中にサッと昆布を入れる井上君を眺めながら私は小さく呟いた。
勿論する気はないけれど……。
「私もー。年甲斐なくはしゃいでみたいなー」
めぐちゃんもおっとりとした口調で言いながら海を眺める。
暫くは様子を窺っていた淳君も、やがては海へと入って行き、井上君と一緒に昆布や貝を拾っては浅井君に見せに行っていた。
「夏になったら、また来よっか。
したら私たちも入ろうよ」
めぐちゃんに笑顔で言われ、私はすぐに頷いた。
疲れたのか、暫くすると淳君が浜辺に戻って来た。
「どうだった?楽しかった?」
私が聞くと、彼はぐったりとしたまま首を横に振る。
「井上、あいつサイテ―だ……。俺の服の中にまで昆布入れてきやがった…」
真顔で言う淳君にめぐちゃんが遠慮なく笑いだす。
彼の濡れた服をからかいながらも、さりげなくタオルを貸してあげていた。
みんなが海から上がって来て、足を拭いて靴を履き直す。
「井上、お前今晩覚悟しとけよ」
いろんなメンバーから言われながらも、井上君は無表情のまま「はいはい」と返している。
「次何処行くー?」
めぐちゃんが言うと、男子たちが次々と聞き覚えのある名所を口にしていく。
市バスに乗って移動をする際、私は淳君の隣りになった。
「淳君、結局あの子とは付き合わなかったの?」
私が春休み少し前のことを思い出して訊ねると、淳君はぼーっとしたまま「誰のこと?」と聞き返して来た。
「前に告白されてたじゃん、クラスの子に」
私が言うと、淳君は思い出したように頷いて「返事すらしてない」と困ったように言った。
町で1番大きいと言われているショッピングモールは大勢の人でにぎわっていた。
「お泊まりなんて私初めてかも。
お菓子いっぱい買いこもうね」
めぐちゃんに笑顔で言われ、私も大きく頷く。
2人で1つのかごにポンポンとお菓子を詰めて行く。
それぞれ同室同士でみんな食料の買い込みをしていた。
梶君は淳君に「これは?」と1つずつ食材を見せていき、どれも首を横に振られてしまっていた。
浅井君と井上君は2人になった途端妙に無言になってしまって、かなりの距離を開けて歩いている。
普段は平然としている割に気にしているらしかった。
「修学旅行とか、春の遠足とか、これから楽しみがいっぱいだね」
その時は、そんなことを言っていた。